【第7回】国税職員時代を振り返る – 局総務と内閣法制局出向

入庁して6年目、私は初めて署ではなく局へ異動となりました。行き先は東京国税局の調査第一部調査審理課です。もっとも、いきなりゴリゴリの審理業務を任されるわけではなく、課内の総務担当という立場でスタートしました。

総務担当という局の洗礼

署でも総務担当はありますが、通常は3年程度は腰を据えて担当することが多く、私は「できれば避けたい部門だな…」と思っていました。ですが、局の総務担当は違いました。1年で異動するのが前提で、しかも会計・服務・文書・厚生といった幅広いジャンルをまるっと経験できます。結果的に、この1年間は自分の知識や経験の幅を一気に広げてくれた濃密な時間になったと思います。

特に大変だったのが会計業務。旅費の処理をいきなり任されたのですが、研修もマニュアルもなし。とりあえず手探りでやってみるしかなく、記録をかき集めては旅費システムを叩き、何とか形にしました。今思えば、あの試行錯誤がのちに活きた場面も多かったです。

また、署と同様に事務年度当初と末は非常に忙しく、局の洗礼を受けた気がしました。とはいえ、普段は朝7時半に出勤して20時には退庁するペース。死ぬほどキツいというわけではありませんでした。残業代もきっちり付きましたし、年収も大きく跳ね上がった記憶があります。

法制局へのまさかの出向

そんな中、事務年度も折り返した年末、総括担当補佐から「君、法学部出身だったよね?法律の読み方は心得ている感じかな?」と、何気なく尋ねられました。そのときは「はぁ…」と曖昧に答えたのですが、年始早々に出向の内示が出ました。行き先はなんと内閣法制局の長官総務室。周囲も私自身も「総務担当が出向するなんてあるのか?」と騒然となりました。

後から聞いた話では、法学部出身者を出向させるという意図があったようです。大学で学んだ内容なんて社会人になってから誰も見ないと思っていたのですが、こんなところを当時は見られていたんですね。課長からも「チャンスがあったら食いついちゃえと思って手を挙げておいた。頑張って!」と背中を押されました。調査部には何十人も職員がいるのに、なぜ自分なのか。戸惑いつつも「まあ頑張るしかない」と、霞が関の4号館へ足を運びました。

国家公務員アベンジャーズ?

出向先の内閣法制局では、各省庁から集められた若手職員によるPTの一員として働きました。雰囲気はまさに国家公務員アベンジャーズ。メインの仕事は法案審査で、誤りや改善点を見つけてより適切な表現を提案していく作業です。

ここで痛感したのが、他省庁職員のレベルの高さでした。例えば、800ページもあるドッジファイルを渡されても、数日で目を通して概要を的確に理解してしまう理解力。そして「ここにこう書いてあるから、こうすべき」と即座に判断し行動に移す実行力。さらにそのスピード感。自分の未熟さをまざまざと感じました。
「頭がいいとはこういうことか…」と心の中で何度も思いました。

金曜の夜はよく飲みに行きました。メンバーの多くが霞が関出身だったので、隠れ家的なおしゃれな店を次々に案内してくれます。女性メンバーは1人だけでしたが、オタサーの姫状態にはならず、みんなフラットな関係で仲が良かったのが印象的でした。たった2か月ほどの出向期間でしたが、仕事も飲み会も濃く、刺激に満ちた日々でした。

局への帰還と庁舎移転の嵐

4月、調査審理課に戻ると、局の庁舎移転直前で業務が山積みになっていました。新庁舎は築地。超勤も90時間ほどになり、夜中の引っ越し見守り業務などもありました。22時から明け方5時まで建物の見張り番をするような、なかなかレアな経験も。
一緒に見守りを担当したのは、5期上の管理企画係の先輩でした。眠気をこらえながら数時間、税務調査の裏話や業種ごとの特徴など、非常に貴重な話を聞かせてもらえたのは思わぬ収穫でした。また、新庁舎の構造もいち早く理解できましたし、引っ越しの大変さも身をもって実感しました。

金融専門部署への異動

5月以降は築地の新庁舎で勤務を続けました。そして異動希望調の提出タイミングが来たとき、私は「調査第三部調査第26部門」を第1希望に書きました。金融と信託の専門部署です。金融機関を税務調査するなんてカッコいい、なんかイケてる。理由はほぼそれだけです。

そして見事希望が叶い、26部門への異動が決まりました。私は内担として配属され、部門の総務的な仕事を任されることになりました。いきなり調査現場に出るのではなく、まずは調査部門全体のスケジュール感や動きを把握できるポジションに就けたのは、今振り返っても良い経験だったと思います。

この1年は、局総務としての経験、法制局への出向、そして庁舎移転と異動と、まさに予想外の連続でした。とりわけ内閣法制局での経験は、自分の視野を大きく広げてくれましたし、他省庁職員のレベルの高さを知ったことで少し危機感も芽生えました。

次回は、金融専門部署である調査第26部門の内担として過ごした1年間について書こうと思います。

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