令和6事務年度。私にとって国税職員としてのラストイヤーになりました。前事務年度に引き続き、法人課税部門の審理上席として法人会担当2年目。最初から「この1年で卒業する」と決めていました。ただし、転職か独立かまでは明確に決めておらず、1年を通じて考えながら答えを見つけようという気持ちでいました。
転職エージェントには前事務年度から登録しており、自分の市場価値については一応理解したつもりです。ただ、会社員として勤めに出るライフスタイルにどうしてもワクワクを感じられませんでした。通勤にも心が躍らないし、組織に忠誠を尽くして働き続ける未来がどうしても思い描けなかったのです。そんな時期に、若くして国税を飛び出し税理士として独立した方々のXのポストや、ひとり税理士の本を読む機会が重なり、やはり自分には「いきなり独立」が合っているのではないかと感じるようになりました。
税理士事務所に所属して修行するという選択肢もなくはないでしょう。しかし、事務所も営利組織であり、将来自分で独立することを前提とした人材を育てる義務はありません。むしろ修行の場として利用することは、事務所側からすれば迷惑かもしれない。そう思った私は、あえて正面突破する形で独立する道を選びました。正直、やっていけるかは今でもわかりません。ただ、数年は収入ゼロでも大丈夫な程度の蓄えはありますし、生活のあてにするつもりはないものの妻の給与収入もあります。気力体力があるうちに挑戦するほうが後悔はない。そう思うと決心は揺らぎませんでした。
法人会担当としての実感
法人会担当として説明会を実施した際、自作のテキストが「わかりやすかった」と非常に好評をいただきました。自分ではそこまで力を入れている意識はなかったのですが、振り返ると、説明や教科書づくりは得意分野なのかもしれません。この経験があったからこそ、将来的に書籍の執筆やセミナー講師といった道も視野に入れることができたのだと思います。職員として最後の年に、自分の強みを新しい形で再発見できたことは大きな収穫でした。
また調査審理では、調査担当者が作成した重審表の文言やポンチ絵に相当手を入れました。口うるさい審理だと思われたかもしれませんが、署長重審の場では「よくわかった」と評価され、すぐに決裁をいただくことができました。調査部門に貢献できたという実感も得られ、最後まで役目を果たせたと感じています。
辞めると決めたとき
9月下旬、署長以下の幹部と直属の上司と飲む機会がありました。その場で署長から「次はどこに行きたい?」と聞かれ、嘘をつくのもどうかと思い、酒の勢いもあって「今事務年度で辞めるつもりです」と告げました。決して推奨できる伝え方ではありませんが、早めに話したことでその後はスムーズでした。直属の上司からは「有給は全部使い切れ」と言われ、約60日分をフルに消化。さらに令和7年分の夏季休暇も加えて、令和7年7月10日を最終日としました。
令和7年の夏季休暇は服務的に問題ないか心配でしたが、総務に確認したら「大丈夫」とのこと。せっかくの制度、使えるものは遠慮なく使い倒す。これもまた一つの行政リテラシーなのかもしれません。
ラストイヤーの過ごし方
有給を使いながらも、法人会と審理業務は続けました。とはいえ、前事務年度で仕事の流れをつかんでいたので、毎日ほぼ定時退庁。気持ちはすでに次のステージに向かっていました。
旅行にもよく出かけました。特に印象的だったのは広島旅行。妻が牡蠣にあたり、ノロウイルスに罹患するという衝撃の出来事がありました。その顛末は別記事に詳しく書いていますのでご興味のある方はぜひご覧ください。
👉 牡蠣とノロウイルス
また、兵庫・大阪旅行では「ドラゴンクエストアイランド」に行きました。冒険を終え、ゾーマと戦ったあの日の高揚感は今でも思い出します。こちらも別記事にまとめています。
👉 ドラクエアイランド発上陸
退職カウントダウン
退職日が近づくにつれて、名残惜しさよりも「早く自由になりたい」という気持ちが強くなっていました。ただし、職場に文句を言いながら辞めるのではなく、笑顔で上機嫌にサッと去ることを意識しました。不機嫌なまま居座る職員へのアンチテーゼとして。
退職辞令を署長から受け取ったとき、辞令を持つ手が妙に強く感じられました。私を辞めさせたくなかったのか、あるいはただ力が入っていただけか。真相はわかりませんが、署長の人情が伝わったような気がしました。その日の夜は妻と焼肉を食べに行く予定で、早く帰って顔を見せたかったというのが正直なところです。最後の日も、特別な感傷に浸るというより、「明日から会社に行かなくていいと思いながら嗜む肉と酒」への気持ちが勝っていたのかもしれません。
ドラゴンクエスト5青年期前半
私にとって国税職員としての16年3か月のラストを例えるなら、ドラゴンクエスト5の青年期前半、大神殿での奴隷生活から樽で脱出し、ようやく修道院にたどり着いたあたりでしょうか。もっとも、私はすでに青年ではありませんが。ちなみに、自宅にはなぜかイブールの本が大量にあります。
修道院のシスターが「今日からあなたは自由です。何をするにも自己の責任で人生を切り開いていかなければなりません」的なことを語る場面が、まさに今の自分の心境に重なります。
結婚はすでにしていますが、これから始まる本当の冒険。自分の意思で切り開く人生は、きっと平坦ではないでしょう。それでも私は、勤め人として一生を終えるより、個人税理士として挑戦することを選びました。
こうして、16年3か月の国税職員ライフに幕を下ろしました。今はもう国税職員ではなく、ただの「いち個人」としての私です。とはいえ「税理士として働かなければならない」という義務感に縛られるつもりはありません。あくまで自分の心の赴くままに生き、毎日を明るく上機嫌に過ごしていきたいと思います。
っというわけで私の国税職員時代を振り返る全17回、ここまで読んでいただきありがとうございます。
明日以降、通常のブログ更新です。
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