独立がしやすい時代における可能性と課題

 かつて「独立」といえば、人生を賭けた大きな挑戦として語られていました。特に会社員として安定した収入を得ている人が起業や転職を選ぶことは、「脱サラ」という言葉に象徴されるように、リスクと覚悟が求められる一大決断でした。

 しかし、時代は令和となり、「好きなことを仕事にする」や「辛ければ辞めてもいい」という考え方が広がり、時間の自由を重視する価値観が浸透してきています。この変化は、独立を目指す人々にとってどのような影響をもたらしているのでしょうか。

独立のハードルが下がる背景

 特に税理士を目指す場合、以前よりも独立へのハードルが大きく下がっているような気がします。その背景には、次のような要因が挙げられます。

1. 学習環境の変化

 税理士試験をはじめとする資格取得のための学習環境は、テクノロジーの進化により格段に改善されました。

  • Web通信教育の普及: インターネットを活用した通信講座により、予備校に通う必要がなくなり、時間や場所に縛られずに勉強が可能です。通勤時間や隙間時間を活用して効率的に学習を進めることができます。
  • YouTubeでの解説動画: 専門的な分野ごとのポイント解説を手軽に視聴できるため、学習にかかるコストや心理的なハードルが下がりました。私個人は、FP1級の受験の際にはYoutubeの解説を何回も視聴して、独学で合格を勝ち取ることができました。
  • 受験資格の緩和: 簿記や財務諸表論といった試験科目へのアクセスが広がり、資格取得を目指す人の裾野が広がっています。(実際の受験者数はあまり増えていないのかもしれませんが。)

2. ロールモデルの可視化

 SNSの普及により、独立後の成功例を身近に感じられるようになったことも、大きな変化の一つです。

  • 国税OBの発信: X(旧Twitter)やブログで、国税職員を経て独立した税理士たちが活躍の様子を発信しています。日々の仕事の様子やクライアント対応、独立後の充実感が伝わる投稿は、これから独立を目指す人々にとって強い励みとなります。
  • 生活の安定性の共有: SNSを通じて、彼らが生活に困っていない様子や自由度の高い働き方を実現している姿を見て、「自分にもできるかもしれない」という自信を抱く人が増えています。

3. 情報の透明化とアクセスの向上

  • 実用書や電子書籍の普及: 書店には税理士として独立するための実用書が並び、電子書籍ではKindleダイレクトパブリッシング(KDP)を通じて実際の開業日誌や経験談が公開されています。これらの情報は、具体的な準備やステップを明確にし、未知への不安を軽減する助けとなっています。
  • 具体的な事例の共有: 独立した税理士たちの成功体験を学ぶことで、独立後に何をすべきかの指針が得られるため、スタートアップ時の迷いや失敗を減らすことが可能です。

独立がしやすくなった時代に考えるべきこと

 これらの変化により、独立は以前よりも現実的な選択肢となりました。しかし、独立には依然としてリスクが伴うことも事実です。まだ独立していませんが、以下のポイントを踏まえた準備が重要なのかなと考えております。

1. 明確なビジョンと計画

 独立がしやすい環境にあるからといって、無計画に行動することは危険なので、どのような顧客層をターゲットにするのか、どの地域で活動するのかといった戦略的なビジョンが求められます。

2. 経済的な基盤

 独立後、安定した収入を得るまでの期間を見越した資金計画が必要ですので、副業や貯蓄を通じて、リスクを軽減するための経済的な基盤を築いておくことが重要だと考えます。

3. 学び続ける姿勢

 税理士として独立するには、常に新しい知識やスキルを学ぶ姿勢が不可欠です。税法や経済の変化に対応するため、最新情報にアクセスし続けることが求められそうです。

まとめ: 「独立」の新たな時代

 令和の時代において、独立はもはや特別な人だけの選択肢ではなくなりました。学習環境の向上、ロールモデルの可視化、情報へのアクセスの向上により、誰もがその第一歩を踏み出しやすくなっています。

 しかし、環境が整ったからといって、成功が約束されるわけではありません。必要なのは、自らの価値観に基づく明確なビジョンと、継続的な努力です。

 「独立がしやすい時代」において、自分の可能性を広げる一歩を踏み出してみるのはいかがでしょうか。その選択肢は、かつてよりも確実に身近なものとなっています。

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