アフロ田中と私の人生観

ときに、皆さんは漫画のアフロ田中シリーズをご存知でしょうか。
1986年生まれの私は、同い年の主人公・田中広と共に年を重ねてきました。アフロヘアという圧倒的な個性を抱えながらも、彼は彼なりに青春を送り、社会に出て、恋をして、結婚し、子どもを育てています。作品の特徴は、現実の時間と同じスピードで進んでいくところにあります。つまり、私が一歳年を取るごとに田中も一歳年を取り、同じ時代の空気を吸っているのです。

私が今回比較したいのは、「さすらい」「しあわせ」「結婚」シリーズです。高校を中退し、旭工務店で働き始めた田中は、社会人デビューが早い分、すでに人生経験を積んでいました。対して私は、高校・大学を経て、国税職員として社会に出ました。田中に比べれば4年以上遅い社会人デビューです。

この「社会に出るタイミングの違い」が、最初の分岐点だったように思います。私は安定を求めて公務員の道を歩みましたが、田中は不安定さを抱えながらも、早いうちから「働くこと」を肌で感じていました。どちらが正解かなんて、もちろんありません。ただ、彼の生き様を読んでいると、自分の道がいかに守られたレールの上だったかを痛感します。

結婚・出産という分岐点

人生を語る上で外せないのが、結婚と出産のタイミングです。田中は合コンで知り合ったナナコと結婚し、すぐに子どもが生まれます。娘のエマは令和元年に生まれ、今ではもう6歳。漫画の中で彼が父親として奮闘する姿を見ると、同じ1986年生まれの人間として「もうそんな時期か」と思わず唸ってしまいます。

私はといえば、国税職員としての仕事が忙しい中で結婚し、子どもについてはこれからの段階です。家庭を持つタイミングが田中よりも遅くなった分、人生のペースも全く違います。けれども、だからこそ「自分は仕事に時間を費やしたな」と納得もできますし、「田中のように早く父親になっていたら、また違う人生があったのだろうな」と想像するのも楽しいのです。

安定と不安定の狭間で

田中の働き方は決して安定していません。現場で体を張り、転職をし、時にお金に困りながらも、仲間と笑い合い、酒を飲み、どうにか暮らしています。

私は逆に、国税という堅牢な組織の中で16年以上働き、安定の象徴のような生活を送ってきました。けれども、それはそれで息苦しさもありました。毎年の人事異動、未経験分野への突然の配属、組織独特の空気。安定の裏には、自由を制限される不安定さも存在していました。

一方で田中は、社会的には不安定でも、自由に振る舞い、自分の感情に素直です。お金がなくても仲間と色んな経験をして過ごす姿は、時に羨ましくさえ感じます。

どちらの人生も悪くない

田中を読んでいて感じるのは、「こっちの道も面白そうだな」という素朴な気持ちです。私は公務員としてのキャリアを経て、今は税理士として独立の準備中です。レールの上を歩いた人生のようでいて、そのレールを降りようとしている自分がいます。

田中のように突拍子もない冒険をしたわけではありませんが、安定を捨てて独立を選ぶ姿勢は、少しだけ彼に近づいたのかもしれません。

結局のところ、人生に正解はなく、どの道にも楽しみと苦労があります。田中が漫画の中で奮闘する姿を笑いながら読みつつ、私は私の人生を生きている。そう思うと、どちらも捨てたもんじゃないな、と心から思えます。

時を同じくして

同い年のキャラクターが、同じ時代を共に生きているという不思議。これはアフロ田中シリーズの大きな魅力です。

「さすらい」の若さゆえの迷い、「しあわせ」での小さな安定の獲得、「結婚」での家庭と責任。私自身も、社会に出て迷い、仕事で地盤を築き、結婚を経て新しい生活に踏み出してきました。田中と私の道は違えど、同じ時代を歩いている感覚が、この漫画をよりリアルにしてくれるのです。

漫画の中に「もう一人の同年代の自分」がいる。そう考えると、人生はちょっと面白く感じられます。

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