税理士として独立を目の前に、こんなことを思っています。
「もしかすると、これから私に必要なのは“税の知識”より“経営者としての視点”なのではないか」と。
もちろん、税理士なのですから、税に関する知識や経験がベースにあるのは大前提です。でも、それだけではどうにもならない場面が、これからいくつも出てくる気がしてならないのです。
「株式会社じぶん」を経営するということ
私は、いわゆる「ひとり税理士」として独立する予定です。スタッフを雇う予定も、最初から事務所を構える予定もありません。ノートパソコンと回線があれば、どこでも仕事ができる時代。自宅兼事務所のスモールスタートを考えています。
たとえ、個人事業主であっても、これから私は「株式会社じぶん」の社長であり、唯一の社員でもあるのだと考えられます。
すると、当然ながら、自分の時間の使い方やお金の回し方、商品(=サービス)の価格設定、顧客対応、広報戦略……すべての意思決定を自分で行わなければなりません。
税務署時代のように上司や幹部に相談すれば何かしらの結論が降ってくる、そんな構造はありません。
つまり、ゲームのルールが変わります。
勤め人から経営者へ。資本主義というゲームへの参加
勤め人の頃は、ある意味“時間を売って安定を買う”というゲームでした。就業時間内に決められた役割を果たすことで、給与という“確実な報酬”が得られました。
でも、独立するとそうはいきません。
「今日は何も仕事が入っていないな」と思えば、その日は売上0円です。休日でも祝日でも、自分が休めば会社も休み、誰も売上を立ててくれません。
この仕組みは、最初は少し怖く感じます。
ですが裏を返せば、どこまでも自由で、どこまでも可能性に満ちた世界とも言えます。
資本主義というゲームのルールに則り、プレイヤーとしての覚悟を持って「自分自身の価値をどう高め、どう届けるか」を考えていかなければなりません。
そんなとき、思い出した「覆面ビリオネア」
最近、改めて見返したくなっているのが、海外のドキュメンタリー番組「覆面ビリオネア(Undercover Billionaire)」です。
ご存じない方のためにざっくり説明すると——
ある億万長者が、身分を隠してわずか100ドルだけを手に、見知らぬ街でゼロからビジネスを立ち上げ、90日以内に100万ドルの企業価値を持つ会社を作れるか?という無茶ぶりな企画です。
シーズン1で主人公となるのは、実業家のグレン・スターンズ。彼は大富豪でありながら、名前も素性も隠し、自分の力だけで事業を起こしていく姿が描かれています。
この番組を観ていて、私が最も感銘を受けたのは「とにかく人と会う」「人に頼る」というスタンスです。
ゼロからスタートしているのに、グレンは躊躇せず、人に声をかけ、助けを求め、対話を重ねていきます。仲間を集め、チームを作り、ビジネスを前に進めるのです。
「ひとり税理士」でも、ひとりで生きていけるわけではない
私も当初は、独立したら“自宅でひっそりとひとりPCに向かって税務申告”というイメージを持っていました。
ですが、それではやがて限界がくるだろうと今は感じています。
人と会う。人に頼る。人と繋がる。
これは「売上を上げるため」という理由だけでなく、「自分がどうありたいか」「どう生きていきたいか」にも関係する、大切な視点だと思うのです。
その意味では、経営学の本も読んでみたいと思うようになりましたし、経営者に関する本をAmazon Audibleで聴く時間も意識的に取るようになりました。
「税理士である前に、経営者である」
その意識を、今この段階から持っておくことが、自分を支えてくれる気がしています。
まとめないけれど、これからの私へ
この記事には、明確な答えも結論もありません。
ただ、「税のプロです」と胸を張るだけでは独立後にやっていけないかもしれない、という“うすうすとした不安”が、今回こうして文章にすることで、少し形になった気がしています。
経営者としての私が、経営者であるお客さまをどう支えていけるか。
まずは、自分自身の“会社経営”からしっかりやっていきたいと思います。
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