キャッチを断る言葉

突然ですが、繁華街に出かけると、居酒屋のキャッチに声をかけられることってありますよね。特に忘年会シーズンの新橋なんかは、本当にすさまじい。スーツ姿のサラリーマンが街中にあふれ、こちらも少し浮かれた気分で歩いているところを、キャッチが虎視眈々と狙っている。まるでハイエナに囲まれたシマウマの群れのようで、なかなかスリリングです。

もちろん、キャッチがついているお店のクオリティはお察しの通りです。ぼったくりとまでは言わないまでも、正直、友人や同僚を気持ちよく連れて行けるお店かといえば微妙です。だから私は(皆さんもそうかと思いますが)基本的にキャッチにはついていきません。むしろ「二次会に行かない」という選択肢や、もし行くならあらかじめお店を決めておくことが、快適な夜を過ごすためには大切だと思っています。

最強の断り文句

さて、そんなキャッチを断る際の便利な言葉をご存じでしょうか。それは、とてもシンプルに「ありがとう」です。

キャッチに対して足を止めるのは悪手です。かといって、完全に無言で通り過ぎると、何メートルもついてこられることがあります。さらに、こちらが強めの「塩対応」をすると、逆に暴言を吐かれるケースすらある。まるで、男性が女性にストリートナンパをして、女性が無視したときに「ブス」と吐き捨てて去るのと同じ構造です。金曜夜の新橋であの女性側の気持ちを痛いほど理解しました。あれが毎日だったら、本当にしんどいでしょうね。

ではどうするか。キャッチが近づいてきて「二次会お探しですか?」「いま空いてるお店ありますよ」と、こちらの歩調を止めようとする。そんな時こそ、一言「ありがとうございます」と言って、そのまま早足で去るのです。

なぜ「ありがとう」なのか。人は誰しも「感謝されると、それ以上は強く出にくい」という心理があります。人に感謝されてなお絡み続けるのは、なかなか勇気がいるものです。つまり「ありがとう」と伝えることで、キャッチ側の攻めるモチベーションを削いでしまえる。実に人間の性分をうまく利用した断り方だと思います。

効果が薄かった断り方たち

比較のために、私が試して失敗した断り方も紹介します。

例えば「もうお店が決まっています」と伝えたことがありました。すると「どこのお店ですか?」と深堀りされる。こちらが答えると「そこはもういっぱいで入れませんよ」と言われ、さらに別の提案をされてしまう。つまり、会話が続いてしまうんです。断ったはずが、なぜか交渉に引きずり込まれるという逆効果。

また「すみません」とだけ言って通り過ぎるのも試しましたが、これは効果が限定的。キャッチからすれば「まだ説得の余地がある」と受け取られるのか、しつこく食い下がられることがありました。

こうした経験を経て、最終的に「ありがとう」がもっとも有効だと実感したのです。

実体験から学んだこと

新橋だけではありません。大学時代の友人と久しぶりに会った新宿や渋谷でも、キャッチはしょっちゅう現れました。特に20代前半の頃は、友人が勢いでキャッチのお店に決めてしまうことも多く、正直あまり良い思いをした記憶はありません。もちろん、即座に二次会会場を決めてくれたこと自体には感謝しています。時間を無駄にせず動いてくれたという意味ではありがたい。ただ、結果的に割高でイマイチなお店に吸い込まれてしまうのも事実でした。

今振り返ると、キャッチについていかないことは、ある種のマネーリテラシーの一部かもしれません。世の中に“自分のところに美味しい話がタダで舞い込む”なんてことはほとんどありません。むしろ「なぜ自分が選ばれたのか?」を疑うくらいでちょうどいい。自分が“カモ”になっていないかを常に意識する必要があるのかと思います。

おわりに

結論として、キャッチを断る時には「ありがとう」と言って立ち去るのが最強です。言われた側は悪い気はしませんし、言う側も角が立たない。余計なトラブルに巻き込まれる可能性も減らせます。

「ありがとう」には、人を丸く収める力があります。キャッチを断るときに限らず、日常のあらゆる場面で応用できる。例えば営業の電話、不要な勧誘、さらにはちょっとした人間関係の摩擦にも。「ありがとう」で締めるだけで、相手との距離感を穏やかに保ちながら、すっとその場を離れることができる。

私自身、キャッチとのやり取りを通じて学んだのは、感謝の言葉が持つ圧倒的な効果です。シンプルで当たり前すぎる言葉だからこそ、逆に人は無防備になる。

そして、こうして文章にしてみると「今日は何の話だ」と自分でも思いますが、日常の中で役立つ小さな知恵として覚えていただけたら幸いです。

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