料理に潜む変数
料理を美味しくつくるためには、いくつもの変数が絡んでいます。調理時間、スキル、調理器具、そして調味料。最近、これらを意識して料理をしてみると、ちょっとした調整でパフォーマンスが劇的に変わるのだと実感します。
まず調理時間について。レシピに「20分煮込む」と書いてある料理を40分煮込んでも、味が倍おいしくなるわけではありません。むしろ素材がくたびれてしまい、最初に想定された時間を守った方が美味しい。時間という変数には融通が利くようで利かない場面があります。
スキルと器具の限界
次にスキル。包丁さばきや隠し包丁など、確かに差は出ます。しかし、私のように日常的に料理をする程度であれば、修練にかけた膨大な時間に見合うほどの差が出るかというと疑わしいものです。スキルはゼロよりはいいですが、努力に見合う投資先かどうかは悩ましい変数です。
調理器具についてはどうでしょうか。例えばチャーハンを作るとき、中華鍋の方がそれっぽい仕上がりになる気はしますが、そもそも家庭用コンロの火力では限界があります。環境という土台が整っていないと、器具という変数をいじってもパフォーマンスの伸びは限定的です。
一方で、ホットクックのような調理家電は優秀です。分量さえ間違わなければ、安定して同じ味を出せる。スキルや火力に左右されないという意味で、この変数はコスパに優れた投資だと感じています。
調味料を変えるだけで料理は跳ね上がる
そして最後に調味料。これこそ最も効果的にパフォーマンスを変える変数だと気づきました。我が家では、塩はパキスタンの岩塩、オリーブオイルはエグレヒオを使っています。七味は八幡屋礒五郎、ラー油は小笠原薬膳島ラー油、醤油は湯浅醤油。ちょっといい調味料を選ぶだけで、料理全体がワンランク上がります。しかも一度買えば何か月ももつので、価格が数倍しても家計に与える影響は僅少です。これを知ってしまうと、安価な調味料に戻るのは難しくなります。
国税時代に思った、モニターという変数
ここまでが料理の話ですが、この「変数をいじると劇的にパフォーマンスが変わる」感覚は、仕事や生活の場面でも応用できると感じています。
たとえば国税時代のデスクワーク。若手はノートパソコン一台でひたすら書類を作っていました。幹部はモニターを支給されていましたが、若手の部署だってデスクワークが主体のところもあります。本当なら全員にモニターを導入すれば効率が上がったのではないか、と今でも思います。予算の都合で難しいにしても、「個人が自前で持ち込むのを認める」くらいの柔軟性があれば、全体のパフォーマンスは大きく改善していたはずです。外部記録媒体の持ち込みは禁止されていましたが、モニターは個人情報保護の観点でも問題ない気はします。
独立後の私が選んだ道具と効率化
独立準備を進める今、私は自宅兼事務所で24インチのモニターとモニターアーム、外付けのキーボードを使っています。たったこれだけで作業効率が劇的に上がりました。国税時代にモニターがなく、画面を行ったり来たりしながら資料を作っていた頃を思い返すと、もう戻れません。ここにかけたコストは、料理における「良い調味料」と同じです。使うたびに違いを実感でき、数か月、あるいは数年にわたってパフォーマンスを底上げしてくれます。
この発想をさらに広げれば、独立して税理士として活動していく上でも「どの変数をいじれば効率が上がるか」を考える癖は大切だと思います。例えば会計ソフトをどう選ぶか、顧客とのやり取りにどんなオンラインツールを導入するか。どれも大きな投資ではないけれど、選び方ひとつで仕事の快適さは大きく変わります。
料理と仕事に通じる「変数思考」
結局のところ、スキルを磨くことはもちろん大事です。しかし、限られた時間と体力の中で最大のパフォーマンスを発揮するには、「変数を見極めていじる」ことの方が即効性があります。料理で塩を変えたら劇的に味が変わるように、仕事でモニターを足したら生産性が跳ね上がる。これを意識できるかどうかが、日々の成果を分けるのではないでしょうか。
私はこれからも、料理と同じように、仕事や生活の中で「どの変数をいじれば一番効くのか」を探し続けたいと思います。調味料を選ぶように、仕事の環境や道具を選ぶ。そうやって少しずつ、自分らしい働き方の味を整えていければと考えています。
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