生成AI、国税職員の私も使ってます
最近、生成AIを活用して仕事の効率を上げている方も多いのではないでしょうか。私もその一人で、ChatGPTに毎月20ドル課金してPlusプランを利用しています。主な用途は、
- 挨拶文の言い回しを工夫したいとき
- メルカリの商品紹介文の案を考えるとき
- 研修の企画をするときのたたき台作成
など。「こういうテーマで、全何回の研修を企画するとしたら、各回の内容をどう組み立てるか?」といったざっくりした相談でも、それなりにまともなアイデアを出してくれるので、正直、かなり助かっています。
しかし、これが 「税法の解釈」 となると話は別です。
生成AIに税法を聞いてみたら……
「AIが進化すると税理士の仕事はなくなるのでは?」という話は、ずっと前から言われています。試しに、ChatGPTに税法の解釈を聞いてみたところ、なかなか興味深い(?)結果が得られました。
例えば、法人税の法令解釈通達について質問してみます。
質問:
「租税特別措置法関係通達(法人税編)42の12の5-1の3にはどのようなことが定められているか教えてください。」
ChatGPTの回答:
「申し訳ありませんが、ご指定の『租税特別措置法関係通達(法人税編)42の12の5-1の3』の具体的な内容を直接参照できる情報が見つかりませんでした。しかし、関連する情報として、租税特別措置法第42条の12の5は『給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除』について定めています。」
……なんだか惜しい。
実際の内容は「中小企業者であるかどうかの判定の時期」についての規定であり、詳細は国税庁の公式サイトに掲載されています。
👉 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/01/01_42_12_5.htm
今回は「見つけられなかった」と正直に言ってくれたので、まだマシです。しかし、時には 存在しない条文を創作してしまうこともある ので要注意です。
AIの税法解釈を信じるリスク
私は現在、国税職員として税務の実務に携わっていますが、今後税理士として独立する予定です。その視点から見ても、生成AIの税法解釈には次のようなリスクがあります。
1. ありもしない規定をでっち上げる
例えば、以前ChatGPTに消費税法の仕入税額控除について聞いたところ、
「インボイスの保存が無かったために仕入税額控除の対象外とされた仕入税額は、申告書付表2-3『課税売上対応控除対象仕入税額等の調整額』に記入することになります。」
と言われました。
そんな欄、存在しません。
つまり、適当にそれっぽい用語を組み合わせて「それっぽい回答」を生成してしまうのです。もしAIの回答をそのまま信じて申告しようとすると、そもそも申告書が書けません。
2. 根拠のない情報を出す
税法は条文や通達など、明確な根拠に基づいて解釈されるべきものです。しかし、生成AIは「それっぽいこと」を言うのが得意なだけで、実際に根拠が正しいとは限りません。
税理士として独立後も、生成AIの回答を 「調べるとっかかり」として使うのはOK ですが、 「AIの言うことをそのまま信じる」のはNG です。
生成AIの「逃げパターン」
AIに税法の具体的な適用について質問すると、結構な確率で逃げます。例えば、
「具体的な処理については、税理士の判断や管轄税務署の確認が求められることもありますので、実務上の対応についてはそのような機関の指導を仰ぐといいでしょう。」
と言われたことがあります。
「逃げたな?」と思いました。
もちろん、税務相談に関してはAIが断言できないのは仕方ないのですが、「じゃあ最初から聞く意味あった?」という微妙な気持ちになります。
結論:生成AIは税理士の仕事を奪うのか?
結論として、 少なくとも2025年現在、生成AIは税理士の仕事を奪うレベルには達していません。
とはいえ、
✅ 文書作成の補助
✅ 研修の企画アイデア出し
✅ 難しい文章の言い換え
などには十分使えます。うまく活用すれば、税理士の業務効率化には大いに役立つでしょう。
しかし、税法解釈を真正面からAIに聞くのはまだリスクが高い。今後の技術進化に期待しつつ、 「AIに仕事を奪われるか?」ではなく「AIをどう使いこなすか?」 を考えたほうが生産的かもしれません。
以上、国税職員(もうすぐ税理士)のAI活用事情でした。
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