生成AIの進化と、次に来るもの
生成AIの進化は本当に目覚ましいですね。ChatGPTも4oから5になり、実際に使ってみるとその違いに驚かされます。4oの方が使いやすかったという声もありますが、私は5のほうが好きです。理由はシンプルで、忖度が少ないからです。人間相手だと「ちょっと角が立つかも」と思ってオブラートに包む場面でも、AIはスパッと意見を返してくれる。その冷たさが逆に心地よいときもあるのです。
さらに気になっているのが「notebookLM」です。まだ使ったことはありませんが、自分で情報を読み込ませ、その範囲でやりとりができるらしい。これをうまく活用すれば、資料の要約や整理、アイデア出しに相当な力を発揮するはずです。税理士として独立予定の身としては、顧客との打ち合わせ資料や法令解釈の整理などにも役立ちそうだと感じています。
生成AIが当たり前になる時代
こうしてAIがどんどん進化してくると、「AIを使える」こと自体が差別化要素ではなくなると考えています。むしろ「みんなが同じようにAIを使える」時代が来る。そのときに、どこで差がつくのか。私は、努力や根性、やる気や誠意といった、人間が得意とする非論理的でエモーショナルな部分だと思ういます。
AIは「効率」や「正確さ」ではすでに人間を凌駕しつつあります。しかし、筋を通すとか、悔しいと思うとか、どうしても非合理的にこだわってしまう部分はまだ人間の専売特許です。合理性では説明しづらいけれど、人間社会では驚くほど大きな力を持っている。次に再評価されるのは、そういう「人間らしさ」ではないでしょうか。
ぱりてきさす氏からの学び
ここで一人、私が昔から影響を受けている方をご紹介します。専業投資家のぱりてきさす氏です。彼の発言や考え方が好きで、もう10年以上、X(旧Twitter)での発信を追いかけてきました。
特に印象に残っているのは、あるとき「橘玲氏の本は全部読め」とツイートされたことです。その一言に背中を押され、私はすぐに池袋ジュンク堂へ走りました。背表紙にずらりと並んだ橘氏の本を手に取るときのワクワク感は今でも覚えています。そして読み進めるうちに、考え方の骨格がガラリと変わりました。
中でも「伽藍を捨てよ、バザールに向かえ」という言葉は、私の人生に決定的な影響を与えました。国税という安定した組織を離れ、税理士として独立するという大きな決断を下す際、橘玲氏の書籍に一環して書かれた主張やメッセージが強い支えになったのです。あのときの自分の胸の高鳴りを思い出すと、今でも「読んでおいてよかった」と心から思います。
努力や根性の割安株
ぱりてきさす氏は、毎年年末に「ぱりてきらじお」という音声番組を配信しています。2024年末の放送でも興味深い話がありました。「今の世の中で割安で放置されているものって何だと思う?」という問いに対して、「努力とか根性だよね」と答えていきました。
たしかに、生成AIがこれだけ進化すると「頭の良さ」や「知識量」といった資産はコモディティ化していきます。だれでも検索すれば、だれでも生成すれば、似たようなアウトプットにたどり着ける。そうなったときに価値を持つのは、どんなに効率が悪くても「それでもやりきる」という人間の執念なのかもしれません。株式市場に例えるなら、今は誰も注目していないけれど、将来的に大化けする可能性を秘めた「割安株」のようなものです。
国税時代に見た「人間らしさ」
国税当局の調査の現場では、法令に基づいて非違事項を見つけ、否認することが大切です。けれども、突き詰めると「課税できなくて悔しい」と思えるかどうかが、本気度を決めるのだと感じていました。
合理的に言えば、「課税できなければ仕方ない」で済む話です。しかし、「どうしても適正公平な課税を実現したい」という思いがあるからこそ、抜け漏れのない調査につながる。幹部職員においても、その「悔しさ」を大事にしている方が多かったと記憶しています。たとえ裁判で勝ち目が無かったとしても、転び方(負け方)を間違えないことにより、税制改正などに繋がり、将来の税制に対して一石を投じることができる場合もあります。
一見すると非合理ですが、こうした感情が組織を動かし、適正公平な課税の一助となっているのは間違いないと思います。そしてこれは、AIにはまだ真似できない領域です。
人間に残された強み
AIは大量のインプットをもとにアウトプットする能力に長けています。しかし、その知識を抽象化し、未来に活かす力はまだ人間に分があります。たとえば「歴史に学ぶ」という発想。歴史上の出来事を網羅的にインプットさせることはできますが、「抽象化して未来に役立てる」という使い方には、まだ人間ならではの感性が必要な気がします。
この「具体を抽象化する力」もまた、人間が持つ大きなアドバンテージでしょう。
最後に
生成AIが進化するほど、逆説的に「非合理な人間味」の価値は高まっていくのだと思います。努力や根性は、今の時代には少し古臭い言葉に聞こえるかもしれません。それでも、割安株のように再評価される時代が来るはずです。
だから私は、AIをうまく使いこなしながら、人間味のほうも多少なりとも磨いていこうと思います。
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