今はそうでもないのですが、20代後半から30代前半くらい、つまり国税局で“修験道編”を生きていた頃は、身に着けるものに強いこだわりを持っていました。
(※修験道編については過去記事をご参照ください。)
過去記事:私の人生が1年1巻の漫画だったとしたら
具体的には、スーツ、ネクタイ、ワイシャツ、靴。全身トータルで“ちゃんとした大人”っぽい見た目に整えることを意識していました。
きっかけは、水野敬也さんの『夢をかなえるゾウ』という本でした。作中のガネーシャという象の神様が、靴を磨け、全身鏡で身なりを整えろと熱く語っておりまして。
それを間に受けた私は、まんまとその教えを忠実に守りはじめました。
また、局内にいた数期上の“できる先輩”たちがとにかくカッコよかったんです。見るからにスーツのシルエットが美しく、ネクタイのセンスも抜群。
ああ、こういうふうに「見た目から信頼される人」になりたい。そう思い立ち、私も少しずつ装いを整えていくようになりました。
スーツ:人生で初めて、服をオーダーしてみた
あるときX(旧Twitter)で「麻布テーラー」というオーダースーツ屋さんを知り、思いきってパターンオーダーに挑戦しました。
3ピース+スペアパンツのスタイルで毎年1着ずつ。完全に「趣味:スーツ」状態です。
着てみて驚いたのは、やはり既製品とはまるで違うフィット感とシルエットでした。特に肩のラインとパンツの裾周りの絶妙なバランス。もう、鏡に映った自分がいつもの2割増しくらい頼れそうに見えるんですよ。
しかも、きちんとブラッシングしたり、ハンガーにかけて風を通したりすれば、何年も着られます。
いまだに当時のスーツを現役で使っているのですが、最近はパワーリフター体型が進んできたせいで、ベストのボタンがうまく閉まりません。スーツのせいじゃなくて大胸筋のせいなんです、たぶん。
ネクタイ:先輩の“首元”から学んだセンス
ネクタイに関しては、完全に“できる先輩ウォッチャー”と化していました。
観察していて気づいたのは、意外とレジメンタル(ストライプ)をしていない人が多いこと。代わりに、ソリッド(無地)やピンドット(小さな点)のネクタイをしていることが多かったのです。
なるほど、シンプルなほうが大人っぽいのか…と気づき、私も真似してFAIRFAXあたりのネクタイを中心に揃えはじめました。
たまに気合いが入ったときは新宿の伊勢丹メンズ館で、マリネッラやボレッリといった“イタリアの血が騒ぐ”系のネクタイを買ったりもしていました。
当時の私の夢は「シャルベのネクタイが似合う男になること」でした。
(残念ながら、今の私は“シャルベに踏み込む勇気”より“帰りに寄るユニクロへの親しみ”の方が強いです)
ワイシャツ:無地の白シャツに、ロマンを見た
最初は鎌倉シャツの白無地・セミワイドカラーを着ていたのですが、ある日「ポケットが無いこと」に気づきました。
それが逆にすごくカッコよく見えて、「ポケット無し=フォーマル」という法則を勝手に確立。
そのうち、シャツも麻布テーラーでオーダーするようになります。無地の白シャツなのにわざわざオーダー。自分でも「これ、もう趣味だな」と思っていました。
洗濯もこだわっていて、白洋舎さんに集配クリーニングをお願いしていました。アイロンのパリッと感が違うんですよ。
思えばあの頃、スーツ周りに月数万円かけていたような気がします。
家では白米と納豆のルーティン生活。衣は華やか、食は質素。実にメリハリの効いた生活でした。
ちなみに今は、ユニクロの白シャツ(セミワイド・ポケットなし)を愛用しています。家で洗えてお財布にやさしい。しかも見た目も案外悪くない。
「コスパの神様って、本当にいたんだな」と感じたのはこのときです。
靴:ソール交換は“通いの証”
足元も、当然ながらこだわりました。まずはスコッチグレイン。東京局勤務時代、東銀座の店舗によく通ってソール交換をお願いしていました。
あとはヤンコ、ユニオンインペリアルなどの中価格帯ブランドをあれこれ試して、最終的には「ユニオンインペリアルの工場セールで現金購入」が私の中での正解となりました。
靴って手入れさえすれば10年以上履けるんですよね。
現に、平成時代に買った黒靴を今でも履いています。元号が変わっても、靴は変わらず。なんだか人生の相棒みたいな気もしてきます。
ベルトだけはユニクロ一択。イタリアンサドルレザーのやつをまとめ買いしていました。
ベルトって、意外と値段の差が見た目に出にくいんですよね…知ってました?
今は、正直そこまで身なりにこだわっていません。時間もお金も、あの頃よりは限られていますし、体型もスーツが悲鳴をあげるレベルになってきました。
でも、不思議と、あの頃の“こだわり”が今の自分の土台を作ってくれた気がします。
仕事に向かう姿勢とか、自分の整え方とか。そういうことを教えてくれたのは、鏡の中の自分だったのかもしれません。
これからまた、新しいこだわりを見つけていきたいです。
ロングホーズとかいいかもしれませんね。
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