【第10回】国税職員時代を振り返る – 庁併任と調査審理課3年目

調査審理課に戻って2年目を終え、気がつけば3年目に突入していました。総務係の時代も含めれば、通算で調査審理課歴はすでに3年。いつの間にか調査審理課の空気に馴染んできたような気がします。

この年は、係長も調査官もほとんどメンバーが変わらず、ある種の安定感が漂っていました。調査対象が連結納税制度適用法人だったため、調査の進捗も緩やかで、夏場(7月~9月)は比較的のんびりとした時間が流れていたのを覚えています。ところが、そんな穏やかな日々は、ある日突然終わりを告げました。

「ちょっと、課長席まで来てくれる?」

9月某日。課長補佐から声がかかり、課長席へ呼ばれました。心当たりは特にないのに、呼ばれると妙にドキドキするのが職場あるあるです。頭の中で「まさか、何かやらかしたか…?」と身に覚えのない懺悔を始めた矢先、思いもよらぬ一言が。

「国税庁の法人課税課に、併任で行ってきてくれ。」

え、庁ですか?しかも、また併任?……と、そのとき思ったのを今でもはっきり覚えています。

辞令コレクター、またも新規追加

国税人生で何かと併任が多く、辞令をもらう機会に恵まれて(?)きました。2年前には内閣法制局への併任も経験しており、今回の国税庁はそれに次ぐ指名です。

併任中の仕事内容は詳しく書けませんが、ざっくり言えば税理士試験関連の事務を担当していました。人事課と法人課税課、両方に併任がかかっていたような気がします。

全国から集まる精鋭たちと、東京代表のワイ

併任者は全国から集められており、税目ごとに分かれたプロジェクトチームのような編成でした。法人担当の併任者は私を含めて4名。関東信越、大阪、福岡、そして東京局代表として私が参加していました。

法人担当は私以外全員優秀ではあったのですが、その中でも一人、ひときわ優秀な人物がいました。私より期別は3期くらい下ながら、公認会計士の資格も持ち、知識量も処理能力も、そして人柄までもがハイスペック。まさに「〇期の全一人材」といっても過言ではないレベルで、私などはただただ圧倒されるばかりでした。

ちなみに彼とは、その後再び庁で同勤することになるのですが、その話はもう少し後で。

平成時代の国税庁、モーレツ文化の香り

当時の国税庁は、今ほど柔らかい雰囲気ではなかったと記憶しています。平成も終盤に差しかかっていたとはいえ、職場文化はまだまだ体育会系の香りが濃く、モーレツ職員的な空気が漂っていました。

そんな中にポンと併任で送り込まれた私。内心、「やっぱり東京局の調査審理課の方が肌に合ってるなぁ」と思う瞬間も若干ありました。それでも、併任者というお客さん扱いも相まって、過度な残業に巻き込まれることもなく、責任ある仕事を担いつつも、ある種ちょうどよい距離感で過ごせていたように思います。

最終日は、オールの洗礼

併任解除の日、送別会的な意味も込めて、領国でちゃんこを囲み、浅草寺でお参りし、そのまま朝まで浅草で飲み明かすという、まさに平成の国税庁流の締めを体験しました。まぁ国税職員人生一度くらいは、課員でオールしてみてもいい思い出になるかもしれませんね。

東京局へカムバック、連結納税との再戦

さて、無事に東京局へ戻ると、ちょうど連結納税制度適用法人の調査の決議が続々と上がってくるタイミング。前事務年度の経験があったおかげで、連結に対する苦手意識は完全には消えないまでも、なんとか食らいついていくことができました。

事実関係の把握とそれに対応する法令の適用という点では、単体法人と同じです。慣れるまでは時間はかかりますが、最後の事案まできちんと決議書決裁を了することができ、ホッと肩の荷が下りた瞬間を今でも覚えています。

ちなみにこの事務年度で担当した一件の審理案件は、後に最高裁まで争われ、結果的に国側が勝訴しました。退職前、当時の係長と飲みに行った際、「あの件、勝ててよかったね」と声をかけてもらい、しみじみと嬉しかったのを覚えています。つい最近、ほんの1か月ちょっと前の話です。

留任、しかし新たな役回りへ

事務年度末の異動期。併任を経験したこともあり、お作法というかファイティングポーズを崩さない姿勢というべきか、とりあえず国税庁を第一希望にしました。が、結果は留任。しかし、今度は担当部門の調査審理がメインではなく、他局(他の国税局)の調査部(課)の調査審理を支援する担当になりました。

前任者の業務を横目で見ていたこともあり、「なんとかなるかな」という淡い自信はありましたが、いざ本格的に担当となると、それまでとはまた違ったスピード感などが求められ、改めて気が引き締まる思いでした。

この頃には、「もう調査審理課って、自分の背番号なのかもしれない」と、半ば達観していたようにも思います。

次回は、そんな他局担当としての一年間を語ります。税務職員人生もいよいよ後半戦、引き続きお付き合いくだされば嬉しいです。

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