令和2事務年度も引き続き国税庁で勤務していました。ご承知のとおり、この年は新型コロナウイルスの影響が本格化し、官庁街もこれまでにない空気に包まれていました。国税庁全体で在宅勤務と出社を交互に繰り返す体制となり、庁舎内の人の動きは明らかに少なくなっていました。
ただし、当時の国税庁にはまだ十分なテレワーク環境が整っておらず、私たちが持ち帰ったのはネットに繋がっていないPC。いわゆるオフライン作業が中心です。私の担当は、新しい税制に対応したQ&Aやリーフレットの作成。質問が多く寄せられそうな論点を自ら設定し、法令に基づく答えを練り上げます。1つの問答ごとにワードファイルを作り、在宅ではデスクトップに溜め込み、出勤日に共有フォルダへ格納する。効率的とは言いがたい方法ですが、それでも少しずつ形になっていく成果物を見ると、達成感はありました。
問いを設定できる人材を求めている
この事務年度は、引き続き新税制導入のためのプロジェクトチームに参加していました。局や署での業務経験が長かった私にとって、庁での仕事はルールや発想がまったく異なる世界。局署では「こうしてください」という事務提要や事務運営指針、それに付随する指示文書に基づいて動くのが基本です。一方、庁はその提要や指針を作る側。つまり、誰かの問いに答えるのではなく、そもそも問いそのものを設定するところから始まります。
この「問いを設定する力」は、人によってアプローチが大きく異なります。アイデアを次々に出す発散型、要点を整理して結論に導く収束型、そのバランス型。仕事の中でそれぞれの持ち味が生きる様子を目の当たりにして、庁の職員って本当にすごいなと感心したものです。
2020年10月10日、結婚
この事務年度の個人的な大きな出来事は結婚でした。2020年10月10日、数字の並びがいいというだけの理由で婚姻届を提出。世の中には「いい夫婦の日(11月22日)」など語呂合わせにこだわる方もいますが、私たち夫婦はそのあたりに執着がありません。
よく「自分が一番不安定なときにそばにいてくれた人をパートナーにしなさい」という言葉がありますが、私の場合はそれが現実になりました。初めての庁勤務、新型コロナ禍というダブルパンチで精神的にもきつかった時期に支えてくれたのが、当時の彼女、今の妻です。もうすぐ結婚5年目ですが、仲の良さは変わらない…と、少なくとも私はそう思っています(妻の心中もそうであることを祈ります)。
結婚休暇と新生活の準備
結婚休暇といえば新婚旅行や両家挨拶が定番でしょうが、当時はコロナ禍で旅行は難しく、両家とも都内在住だったため挨拶はサクッと終了。残りは引っ越しと新居の準備に全力投球しました。私は人形町で一人暮らし、妻は実家暮らし。新生活のためにダイニングテーブルや大型家電を揃え、組み立てが必要な家具はひたすら作業。引っ越し先は私が提案した公務員宿舎で、妻も快諾してくれました。偶然にも妻の実家からそう遠くない場所で、築年数も比較的新しい物件。実際に5年弱住みましたが、とても快適な環境でした。今は退職して退去しましたが、あの宿舎生活も良い思い出です。
課業時間外の執筆
この年度は、課業時間外にも執筆業務がありました。といっても、係員全員が持ち回りでやる仕事で、法令解釈通達の解説冊子や週刊税務通信に掲載する記事の執筆です。報酬は原稿料として支払われ、きちんと雑収入として確定申告しました。必要経費はほとんどなかったため、源泉徴収だけでは足りず確定申告時は納税になります。
あっという間に事務年度末
事務年度末を迎えます。プロジェクトチームは存続することとなり、私は引き続き留任することになりました。そして、局の調査審理課時代の後輩が同じチームに加わることになります。振り返ると、この事務年度は仕事よりは私生活が大きく動いた1年でした。庁での仕事の進め方にカルチャーショックを受けつつも、新しい生活の基盤も築いた年。あの頃に作ったQ&Aなどは、今でも国税庁HPに掲載されており、自分の小さな足跡が形として残っていることに少し嬉しさを感じます。
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