若い国税職員、意外と税理士試験受けている件

私が国税の職場を辞める最後の年のことです。署に勤務していて、若手の職員と飲み会やサークル活動を通じて話す機会が多くありました。その中で驚いたのが、「今の若い人、意外と税理士試験受けているんだな」ということです。

私が想定している若手というのは、初年度からいきなり課税系統に配属された専科50期台前半くらいの世代です。いわゆる国税でキャリアを積んで23年勤務で税理士資格免除を狙うよりも、早めに受験に挑戦してあわよくば10年免除しようという雰囲気をまとっている人たち。正直、私はびっくりしました。

オープンすぎる令和の若手

ある飲み会でのことです。若手同士で盛り上がっていた中、一人が私に向かって「こいつ、税理士試験受験してるんすよ」と紹介してきたんです。すると、その紹介された本人が「そうなんですよ〜」と、まるで趣味の話でもするかのようにあっけらかんと答えていました。

そんなに仲良くもない中年のおじさん(私)にそんなオープンに話していいのかい、と内心突っ込みました。ですが、そんな姿を見て「令和の若者だなあ」と感心しました。隠すどころか、むしろ普通に打ち明けてしまう。陽キャ気質だからというのもあるのでしょうが、世代の気質そのものが変わってきているのだと思います。

私の感覚では、以前の職場では「税理士試験を受けています」と公言するのは少し勇気がいるものでした。試験を受ける=将来独立志向と見られることもあり、言い出しづらい雰囲気が漂っていたからです。でも今の若い世代は、SNSで「現役国税職員・税理士試験受験生」と名乗る人がいるくらいですから、自分の立ち位置を隠さず表明することに抵抗がないのでしょう。

税理士試験に挑む理由

なぜ彼らは税理士試験を受けようと思ったのか。話を聞いてみると「仕事が終わるのが17時だから、そのあと時間がある」「コロナ禍で外出が制限されていたから暇つぶしで始めた」といった声が多かったのが印象的でした。

もちろん、それが本音のすべてではないでしょう。実際には「早く税理士になりたい」という気持ちがあるのかもしれません。ですが、建前として「暇だから始めた」と言えるくらいに、彼らにとって受験が自然な選択肢になっているのだと思います。

私が若手の頃は、国税にいる限り「23年で免除」という道が現実的でした。それに比べると、今の若手はなるべく早く身軽になっておこう姿勢が強いように感じます。

意気投合できた瞬間

そんな彼らに対して、私も「実は簿記論と財務諸表論をとっているんだよ」と打ち明けると、すごく興味を持ってもらえたような気がします。

若手からすると、中年の職員が「実は受験経験者だ」と言ってくれるのは安心感につながるのかもしれません。勉強方法や試験の大変さを共有できる人が身近にいるというのは、それだけで励みになるものです。

そして、私自身も彼らと話していて刺激を受けました。試験勉強に取り組むエネルギーは純粋に尊敬できますし、彼らが10年後に税理士として独立していたら、同業者として切磋琢磨できる未来が待っている。そう思うと、むしろ楽しみな気持ちになりました。

背景にある「世代の風潮」

改めて振り返ると、こうした「受験をオープンにする風潮」にはいくつか背景があると思います。

  • 世代の気質:自分のキャリアや考えを隠さず共有することが自然になっている。
  • SNSの存在:匿名であっても「国税職員で受験生」として発信する人が増え、可視化された。
  • 働き方の変化:定時で帰れる環境が整い、勉強時間を確保できる職員も多い。

つまり、時代そのものが「資格試験を挑戦しやすい」空気をつくっているのだと思います

私はこの状況をポジティブに受け止めています。焦りは一切ありません。私は私で国税職員時代に培った経験や得意分野で勝負すればいい。むしろ、将来彼らが税理士になったときに一緒に業界を盛り上げていけたら、それはとても素晴らしいことだと思います。

考えてみれば、国税の仕事と税理士の仕事は地続きです。調査や審理で得た経験は、税理士業務に役立つところもあると思います。だからこそ、若手が試験勉強をしながら日々の業務に取り組んでいる姿は、未来の業界を支える力強い光景に思えました。

おわりに

こうして振り返ると、最後の年に「若い国税職員も意外と税理士試験を受けている」という気づきを得られました。

飲み会でオープンに打ち明ける若手の姿。コロナ禍をきっかけに勉強を始めたという軽やかな理由。それでも裏には「自分のキャリアを切り拓きたい」という本気の思いがある。

時代の空気と世代の気質の変化が重なり、税理士試験に挑戦する若者が増えている。そう感じながら、これから同業者になるであろう彼らの一部と業界の未来に対し、前向きに捉えています。

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