無職まであと1時間、退職前夜

明日は、辞令交付の日です。
退職辞令の効力は、法的には交付の時点から当日0時に遡及するそうなので、私の肩書は0時をもって「無職」となります。

長かったようで、思い返せばあっという間だった16年3か月の国税職員生活。
定年まで勤めあげた方々が並ぶ退職者あいさつの中に、自己都合退職者の私が挨拶することはありませんが、もしもあの場に立つのであれば——という気持ちで、このブログに綴ってみようと思います。


「定年まで勤めあげた方々がご挨拶される中、自己都合で退職するこのような私にご挨拶をさせていただく機会を設けていただきありがとうございます。」

……と、仮想の挨拶を始めるとするなら、こんなふうになるでしょうか。

私のキャリアの出発点は〇〇税務署。管理運営部門での1年、そして調査部門での3年には、専科研修の半年間も含まれており、現場と学びを並行しながらの濃密な時間でした。
その後、△△税務署で法人の審理を経験し、現在そのポジションに就かれている□□さんの姿を見るたびに、当時の記憶がよみがえります。

調査部の調査審理課へ異動したのが、次のステップでした。局1年目で庶務担当という肩書きだったものの、年明けには内閣法制局に出向することとなり、他省庁の若手職員と共に働く中で、法制業務の全体像を肌で感じることができました。これが、今からおよそ10年前のことです。

その後は調査部の調査26部門へ異動。銀行担当として内担を1年務めたのち、ようやく外回りかと準備調査に励んでいたところ、再び調査審理課へ呼び戻され、さらに3年間の審理業務に従事しました。
ちなみに調査審理課は「1000日修行」とも呼ばれており、「3年間審理を務めてようやく一人前の審理担当」と言われていたものです。私もそこで多少はマトモになったのかもしれません。

この調査審理課での勤務中に、某法人の更正事案に関与することがありました。
そして時を経て、令和6事務年度、A税務署で勤務している今、その事案に関して国側の主張が最高裁で認められ、勝訴の判決が出されました。
直接の担当からはだいぶ時間が経っていますが、長く関わってきた案件が最終的に認められる様子を見届けることができ、一区切りがついたような思いがあります。

審理の任を終え、ようやく希望していた26部門に戻ることができたものの、半年の調査を終えたタイミングで庁の法人課税課に異動となり、新たな環境へ飛び込むことになりました。

ちょうどその頃、コロナ禍が始まり、仕事に慣れる間もなく降り続ける案件に追われる毎日が続きました。
金曜の夜は、翌日を気にせず残業ができる日。明け方近くまで超勤した後、千代田区のレンタサイクル「ちよくる」で昭和通りを爆走し、当時の住まいの人形町まで帰った日も今では良い思い出です。

その後、庁の法人課税課で3年半を過ごし、現在のA税務署に着任。2年目の今事務年度をもって退職を迎えることになりました。


法人課税部門の解散会では、「税理士として独立します」とご報告しました。
もちろん、税理士としての道を選ぶ準備は進めていますし、登録書類もこのあと郵送予定です。

ただ、最近では「税理士業にこだわりすぎる必要はないのでは」と感じるようにもなってきました。
あまりにも“税理士”という肩書に自分を閉じ込めてしまっては、人生の本質を見失ってしまう気がしたのです。
これからは、もっと自由に、自分の心が動く方向へ。いろいろな働き方を模索しながら生きていこうと思っています。


ところで、年始の署内挨拶の場で、★★署長が「実はB’zの稲葉さんと同年代なんです」と話されていたのが印象に残っています。
そのとき私は、「まだまだ若いじゃないですか」と素直に思いました。
署長のような立場にある方ですら、これからも人生が続いていくんだなと感じたのです。

そんなことを考えていた流れで、「では、自分と同世代の著名人って誰だろう?」と頭を巡らせたところ、思い浮かんだのが田中みな実さんでした。
どうでもいい話かもしれませんが、彼女は大学の同級生です。学部は異なっていましたし、面識があったわけではありませんが、学生時代の友人の結婚式で参列されている姿を見かけたこともあります。

ここで声を大にして言いたいのは——田中みな実さんはおばさんではない、ということです。
ならば、私もまだおじさんではない。そう自認して、40歳を目前にしたこれからも明るく上機嫌に生きていこうと思っています。


よく言われる話に、「若い頃はお金がなく、年をとると体力と気力がない」というものがあります。
けれど私は、どちらにも当てはまらない場所に立っているように思います。

お金は……正直あまりありません。
ですが、体力と気力はむしろ20代の頃よりも充実していると感じていますし、頭の中もずっとクリアで、より深く思考できるようになった実感があります。
これは年を重ねたからこそ得られた、自分だけの強みなのかもしれません。


この場を借りてひとつだけお伝えしたいのは、「みんな辞めて自由になろう」という話ではない、ということです。

むしろ、国税という組織の中に残り、これからも働き続ける皆さんが、より良い現場をつくっていってくださることを心から願っています。

昭和25年の国税庁開庁式において、GHQ経済科学局のハロルド・モス氏は「正直者には尊敬の的」と語ったそうです。
正直者の私から見ても、現場で日々奮闘されている皆さんは、本当に尊敬に値する存在です。

どうかこれからも、お身体に気をつけて。
お互いの人生が、それぞれの場所で良い方向に進んでいくことを願っております。

16年3か月、本当にお世話になりました。


と、こんな感じで退職前夜の気持ちを妄想交えて綴ってみました。
明日は9時から辞令交付なので、そろそろ寝ようと思います。おやすみなさい。

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