国税専門官としてのキャリアをスタートすると、最初の3か月は専門官基礎研修(以下「専基礎」)という、いわば社会人としてのウォーミングアップ期間を過ごすことになります。ここでの過ごし方は人それぞれですが、本題はその後。3年間の実務経験を経て迎える専科研修、このタイミングで簿財(簿記論・財務諸表論)を受験するのがアリなんじゃないかという話です。
専科研修後の簿財受験、今さらながら考えてみた
専科研修は2月末に終了します。これは国税職員としてのキャリアの節目であり、ある意味で知識量がピークに達するタイミングです。特に会計・税務の知識については、人生で最も鍛えられている時期と言っても過言ではありません。
私自身、この時期の簿財受験を完全にスルーしたことを、今になってほんのり後悔しています。若かったこともありますが、専科研修を終えた直後の私の頭は割とクリアでしたし、そこから300時間くらい勉強を上乗せすればその年に受かったのではないかと思ったりします。
ただし、過去には戻れないので、これから専科研修を迎える方々には「せっかくだし受けてみるのもアリでは?」とお伝えしたいと思ってます。
なぜ簿財を取るのがアリなのか?
- 知識がフレッシュなうちに受験できる
簿記・会計の知識は使わなければすぐに錆びつくものですが、専科研修直後なら頭の中がまだ研修モード。学んだ知識を最大限活かせるチャンスです。 - 将来の選択肢を増やせる
国税職員のキャリアを長く続けるかどうかは、人それぞれ。ただ、「もし今後別の道を考えるとしたら?」という視点を持っておくのは悪くないはずです。税理士試験の科目合格は、後々のキャリアチェンジにおいてプラスに働く可能性があります。 - 職場での精神的な余裕が生まれる
これは実体験ですが、「いつでも辞められる」カードを持っていると、不思議と職場でのストレス耐性が向上します。特に理不尽な出来事に直面した際、「この環境に縛られる必要はない」と思えるのは精神衛生上、かなり大きいです。
具体的にどう勉強すればいいのか?
簿財受験にあたっては、大きく2つの選択肢があります。
① 1科目ずつ vs. 2科目同時受験
圧倒的に2科目同時受験を推奨します。理由は以下のとおり。
- 簿記論と財務諸表論は内容が重複しており、同時に学んだほうが効率的。
- 直前期に「これはダメかも…」と思っていても、結果的に片方、あるいは両方合格している人が多い(観測範囲)。
- 簿財同時受験で不合格になった人で、「片方だけに絞れば受かったかも…」と後悔しているケースを見たことがない(観測範囲)。
ちなみに私は1科目ずつ受験してしまい、
- 1年目:財表(独学)合格
- 2年目:簿記論(独学)不合格
- 3年目:簿記論(予備校)合格
という遠回りコースをたどりました。今思えば、2年連続で簿財同時受験していればもっと早く終わっていたのでは…?と考えることもありますが、まぁ最終的に取れたのでヨシ!
② 独学 vs. 予備校
- 独学でも十分合格可能。ただし、情報の取捨選択やスケジュール管理が鍵。
- 確実に1発で合格したいなら予備校のほうが無難。
3月以降に1月開講の大原のWeb講義を通勤のお供に聴き、平日2時間・休日5時間のアウトプットを積めばGW前までには十分追いつけるはず。
なお、元国税で現在税理士として活躍されているKさんは、簿財を独学で1発同時合格(勉強期間:1月~8月)されています。彼の勉強法は再現性が高いので、参考にしてみるのもアリです。
簿財独学法(プロローグ)~簿財独学は簿記1級合格者が前提なのか???~
研究科という選択肢もあるが…
実は、一部の研究科過程を修了することで簿財免除することも可能。ただし、注意点があります。
- 卒業後5年以内に退職すると学費返納義務あり
- 入学難易度が高く、狭き門
つまり、「研究科に行けば楽に免除ゲット!」というわけではなく、それ相応のリスクと労力が伴います。簿財受験と並行して考えるなら、しっかりメリット・デメリットを比較する必要があります。
最後に
もし専科研修後に「何かに挑戦してみようかな」と思ったら、簿財受験を視野に入れるのもアリです。知識がフレッシュなうちに行動すれば、将来の選択肢が広がる可能性もあります。
国税職員としてキャリアを積むのもよし、税理士を目指すのもよし。どちらにせよ、「やらずに後悔するより、やって後悔する」ほうが納得感はあるのではないでしょうか。
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