エビデンス至上主義への懐疑

私の好きな本のひとつに、神田昌典氏の『非常識な成功法則』があります。この本は、自己啓発書の王道とも言える内容で、「やりたくないことリスト」から本当にやりたいことを見つけ出し、毎晩10個の目標を書き続けて潜在意識に刷り込むことで成功を引き寄せよう、という趣旨の本です。

この手の本に対するよくある批判として、「科学的根拠がないから試す価値がない」というものがあります。たしかに、著者自身も「科学的根拠はない」と認めています。しかし、「やってみたら本当に成功するのだから、それでいいじゃないか」と言っているわけです。

ここで言いたいのは、「エビデンスがないからやらない」ではなく、「とりあえずやってみたら意外とうまくいくこともある」ということです。

エビデンスがなくても成功することはある

「エビデンスがないから無意味」と言われたものの中に、実際に成功を収めたものは多くあります。例えば、「腹筋ローラーは意味がない」と言う人がいます。でも、YouTuberのサイヤマングレート氏は「腹筋ローラーでこの腹筋を作った」と公言しています。科学的見地からは効率が悪いかもしれませんが、本人がその方法で結果を出している以上、意味がないとは言い切れないと思います。

ビジネスの意思決定も同じです。スティーブ・ジョブズの直感的な判断は、データでは説明できない部分が多かったとされています。それでも彼はアップルを成功に導きました。「市場調査ではiPhoneは売れないと出た」と言われていますが、ジョブズの「こんなの絶対流行る」という直感が勝ったわけです。

エビデンスを求めることは重要、でも……

もちろん、エビデンスを軽視しろと言いたいわけではありません。医学や科学の分野では、確かな根拠に基づいた判断が求められます。エビデンスがあることで、無駄な努力を省き、効率的に目標を達成することができるのも事実です。

ただし、エビデンスを絶対視しすぎると、新しいことに挑戦できなくなる危険があります。「科学的根拠がないからやらない」という態度では、可能性を自ら狭めてしまいます。エビデンスはあくまで一つの指標であって、それがすべてではないのです。

まずは行動してみることが大事

ビジネスの世界でも、税務の世界でも、エビデンスに頼ることは重要です。しかし、それだけでは足りません。むしろ、データがない状態でも「まずやってみる」ことが求められる場面が多々あります。

例えば、私は今後税理士として税務相談を受けることがあるかと思いますが、すべてのケースに明確なエビデンス(過去の判例や事例)があるわけではありません。税法は条文や通達だけではカバーしきれない部分があり、最終的には過去の類似事例等をもとに判断することが必要となる場面もあります。

また、企業経営においても、「この施策に確実な成功のエビデンスはあるか?」と問われたら、明確な答えが出せるケースは少ないでしょう。エビデンスを探している間に、ライバル企業はどんどん行動し、市場を先に取ってしまうかもしれません。

エビデンスがなくても、信じて続ける

エビデンスは大事。でも、エビデンスがなくても効果がありそうなら、とりあえずやってみる。これが、成功への大事なステップだと思います。

結局のところ、「エビデンスがないなら意味がない」と言って何もしないより、「エビデンスがなくても、やったら成功するかもしれない」と思って行動する人のほうが、成功を掴みやすいのではないでしょうか。

少なくとも、私自身はこれまでの経験からそう信じています。そして、それこそが、エビデンスを超えた「リアルな成功法則」なのかもしれません。

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