税理士になる気がなくても、免除申請をしておく理由

簿記論と財務諸表論に合格して、10年免除だけ受けておいて、その後のことは後から考えよう――正直、そんなスタンスでいました。
ですが、先日、国税職員23年選手の方々と話す機会があり、ちょっとした考えの変化がありました。

その方々いわく、「税理士として働くつもりはないけど、逸失利益のことを考えて、とりあえず税理士試験免除の決定だけはしておく」。
なるほど、そんな発想もあるものかと思いました。

免除しておくと「逸失利益」が増える?

税理士免除が将来の収入とどう関係するのか。
正直、私も最初はピンときていませんでした。
話を聞いていくうちにこういうことなのかな~と思い、以下妄想もあるかもしれませんが書き記していきます。

「逸失利益」とは何か

逸失利益というのは、交通事故などの損害賠償の場面でよく登場する言葉です。
たとえば、万が一の事故で重度の後遺障害を負ってしまったり、命を落としてしまった場合、
「本来なら、将来これだけ働いて、これだけ稼げたはずだった」という収入の“見込み”が失われます。

その失われた将来の収入分を、加害者や保険会社に請求する。
それが、いわゆる「逸失利益」です。

逸失利益の計算式(ざっくり)

逸失利益は、ざっくり以下の式で算定されます。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数(就労可能年数の現在価値)

簡単にいえば、
「この人がこれからどれだけ稼げたか」を推定し、
その収入が失われた分を“お金に換算して補償する”という考え方です。

そしてこの“基礎収入”の部分に、税理士試験免除が影響してくるようです。

免除しておけば「税理士として稼いでいた」ことにできる?

国税職員として働いていれば、それだけでも安定した収入はあります。
ただし、事故などの際に将来の収入を見積もるとなれば、それはあくまで「公務員の収入」ベースで評価されます。

ところが、税理士試験の免除要件(23年勤務、あるいは10年勤務+簿財合格)を満たしていれば――
「この人は税理士になれたはずだ」
「将来的には開業して、年収○○○○万円を稼いでいた可能性がある」
といった評価が、保険会社や裁判所にとって“現実的なシナリオ”として採用されることがあるそうです。

つまり、税理士という比較的高収入の専門職に就いていたとみなされれば、逸失利益が上積みされる可能性がある、ということです。
本当にそうなのかな……とは思いつつも、理屈としては腑に落ちます。

イメージで見ると…

これはあくまで参考値ですが、以下のようなイメージになります。

状況基礎収入ライプニッツ係数(20年)逸失利益
公務員のまま年収800万円約13.65約1億0,920万円
税理士として独立年収1,000万円約13.65約1億3,650万円

差額、ざっと3,000万円くらい?
もちろん「年収1,000万円で成功していた」とは証明できませんが、
少なくとも税理士資格を持っていた/免除要件を満たしていたという事実が、逸失利益を計算する際の“根拠”として機能するようです。

税理士になる気がなくても、免除だけはしておく人が多い理由

この話をしてくれた職員いわく、
「独立する気がない人でも、免除申請だけはしておく人が多い」とのことでした。

税理士として働くかどうかは別として、

  • 万が一、事故などで働けなくなったときの“保険”として
  • 遺された家族に対して、賠償金額を少しでも多く残すために

とりあえず免除申請だけはしておく。
「逸失利益の底上げ」が目的というわけです。

独立はしないけど、免除だけは済ませておく――
これが、いわばリスクマネジメントの一環として機能しているという話でした。

「事故に遭ってから慌てても遅い」

これは、人生のあらゆる場面で通じる言葉だと思います。
税理士試験の免除もまた、「いざというときに備えておく」という意味では、ひとつの選択肢になるのかもしれません。
この制度を活かすも殺すも、自分次第です。

余談ですが…

こういう考え方は、個人的に好きです。
一見、用意周到すぎるようにも見えるかもしれませんが、合理的で筋の通った行動だと思います。

未来の自分や、大切な人のために、少しでも多くの可能性を残しておく――
制度というのは、そういう目的のためにあるのではないかと、改めて感じました。

「税理士になるつもりがないから、免除はしない」
それもひとつの考え方です。
でも、「なるかどうかはわからないけど、免除だけはしておく」
この選択肢にも、意外と大きな意味があるようですね。

ちなみにその日は、ありがたいことに私の送別会でした。

気づけば2次会まで突入して、盛り上がりすぎたせいか記憶がところどころあやふやになっておりますが、忘れないうちにこうしてブログに書き留めておこうと思います。

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