結論:提出先の「所管」が違う
今日は、法人税申告でたまに出てくる「法人事業概況書」と「会社事業概況書」の違いについて整理します。結論から言うと、両者は名前が似ていますが、想定している提出先(所管)が違います。
- 法人事業概況書:税務署が所管する法人が、確定申告書と一緒に提出する書類
- 会社事業概況書:国税局の調査課(調査部)が所管する法人が、確定申告書と一緒に提出する書類
実務上の悩みは、「自社が税務署所管なのか、国税局調査課所管なのか分からない」ことに集約されます。書類そのものより、所管の判定が面倒です。
目安は資本金の額等1億円。ただし例外はある
ざっくりした目安としては、次の理解でほぼ困らないと思います。
- 資本金の額等1億円未満:税務署所管
- 資本金の額等1億円以上:国税局調査課所管
ただし、例外はあります。たとえばグループ通算制度における通算子法人などで資本金の額等が1億円未満だけど、通算親法人が資本金の額等が1億円以上だから通算グループ内の全法人が局所管になるみたいなケースがありますので、あくまで目安です。
局所管の通知は来るが、現場では共有されにくい
国税局調査課所管の法人には、所管部門が通知されます。私の現役時代の記憶だと、法人に対してはがき等で「貴社は国税局所管で、担当は調査第◯部の調査第◯部門です」などの趣旨が伝わる運用がありました。相談先も所轄税務署ではなく所管部門に、という案内が入っていたはずです。
ただ、会社の現場ではこれがうまく機能しないことが多々あります。資本金1億円以上の法人は規模が大きいことが多く、はがきが届いても「社内のどこが受け取って、誰に共有するか」が曖昧になりがちです。結果として、関与税理士に情報が伝わらないケースも非常に多いです。
さらに、会社事業概況書の作成は、実務的には関与税理士が担当することが多いので、「クライアントが局所管か署所管か分からない」まま申告期を迎える、という状況が起こり得ます。
いちばん困るのは「どっちでもいいですよ」になりがちな点
ここで税理士側が困るのは、こちらは正しい書類を提出したいのに、当局側の回答が「どちらでもいいですよ」といったニュアンスになりやすい点です。そもそも、両者の書類がどういう整理で分かれているのかを把握していない職員も少なくない印象があります。
もし「ワンスオンリー」や「ワンストップ」の税務行政を目指すのであれば、法人事業概況書と会社事業概況書は規格を統一してほしいところです。現状は、税務署所管を主に扱う課税部と、局所管法人を主に扱う調査部が別体系で運用している結果、似た目的の書類が二種類存在しているように見えます。提出先だけでなく、提出物も「ワンスオンリー」で済む形にしてほしい、というのが率直なところです。
実務の落としどころ:資本金1億円前後は一度だけ確認する
現実的な対応としては、資本金が1億円前後の法人については、念のため「自社が局所管か、税務署所管か」を一度確認してから提出するのが無難です。
ただ、ここでも別の問題があります。電話相談センターや所轄税務署に聞いても、所管の整理が十分に共有されておらず、結果として「御社が署所管か局所管かによって然るべきほうを出して下さい。既に通知しているはずです。」と返ってくることがある点です。個人的には、こうした回答は減ってほしいと思っています。少なくとも、確認した結果が「局所管」なのか「署所管」なのか、回答をはっきりさせてほしいところです。

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