今日の朝のニュース番組で、国土交通省が「残クレ型住宅ローン」を推進していくという話題が取り上げられていました。
これを聞いたとき、正直な感想としては「まーた厄介なローンを推進して…」というものでした。
車の世界ではすでに一般化しつつある「残クレ(残価設定クレジット)」ですが、その考え方が住宅ローンにも波及していくとなると、冷静に仕組みを理解しておく必要があると思います。
「残クレアルファード」というネットミーム
まず前提として、「残クレアルファード」という言葉を見聞きしたことがある方も多いかもしれません。
これは、トヨタ・アルファードのような高級ミニバンを、残価設定クレジットで購入している人を揶揄するネットミームです。
一見すると高級車に乗っているように見えるものの、実際には、
- 車両価格の一部(残価)を最後まで支払っていない
- 月々の支払額は抑えられている
- しかし、残価部分にも金利がかかり続けている
という構造になっており、「見た目ほど余裕があるわけではない」というニュアンスを含んだ言葉です。
このミームが広がった背景には、残クレという仕組みそのものへの違和感があるように思います。
そもそも残クレとは何か
残価設定クレジットとは、購入時に将来の下取り価格(残価)をあらかじめ設定し、その残価を除いた金額だけを分割で支払う仕組みです。
例えば、500万円の車を購入する際に、
「5年後の残価を200万円」と設定すると、
実際に分割で返済する元本は300万円になります。
そのため、月々の返済額は低く抑えられます。
これ自体は、キャッシュフローを軽く見せるという意味では合理的に見えるかもしれません。
しかし重要なのは、支払っていない残価部分にも金利がかかり続けるという点です。
また、契約終了時には、
- 残価を一括で支払う
- 乗り換える
- 返却する
といった選択を迫られます。
「今は返さない」というだけで、借金が消えているわけではありません。
残クレの考え方が住宅ローンへ
今回話題になっていた「残クレ型住宅ローン」は、この残価設定の考え方を住宅にも応用しようとするものです。
つまり、
- 将来の住宅価値(残価)を設定
- その残価を除いた部分だけを返済
- 月々の返済額を抑える
という仕組みです。
背景としては、住宅価格の高騰や若年層の住宅取得のハードルを下げたい、という政策的意図があるのだと思います。
その意図自体は理解できます。
ただ、仕組みとして見たとき、私は「筋が悪すぎる」と感じました。
なぜ危ういと感じるのか
最大の問題は、住宅という極めて長期・高額な資産に対して、残価という不確実な前提を置くことです。
車と違い、住宅の価値は、
- 立地
- 周辺環境
- 人口動態
- 建物の劣化
など、数十年単位で大きく変動します。
将来の残価を正確に見積もること自体が、極めて困難です。
さらに、残価部分にも金利がかかるという点は車の残クレと同じです。
つまり、「返していない部分」に対して、ずっと利息を払い続ける構造になります。
月々の返済額が低く見える分、心理的なハードルは下がりますが、総支払額は増えやすい仕組みだと言えます。
原則、借金はしない方がいい
私は、原則として「借金はしないほうがいい」と考えています。
住宅ローンについても、必要最低限に抑え、返済計画を明確にしたうえで組むべきものだと思っています。
残クレ型ローンは、「今は返さなくていい」という安心感を与えますが、その裏で、
- 将来の不確実性を引き受ける
- 金利負担を長期化させる
- 選択肢を将来に先送りする
という性質があります。
これは、短期的な楽さと引き換えに、長期的な自由を削っているとも言えます。
まとめ
「残クレアルファード」という言葉がミーム化したのは、残クレという仕組みが持つ違和感を、多くの人が直感的に感じているからではないでしょうか。
その考え方が住宅ローンにも広がろうとしている今こそ、
仕組みを理解したうえで、本当に自分にとって合理的なのかを考える必要があると思います。
月々の返済額が低い、という一点だけで判断せず、
総支払額、将来の選択肢、金利のかかり方まで含めて見ること。
それが、残クレ型住宅ローンと向き合ううえで最も大切な姿勢ではないでしょうか。


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