法人に対する税務調査では、消費税の不正還付などの重点調査を除けば、原則として3税同時調査が行われます。
この「3税」とは、法人税・消費税・源泉所得税の3つです。
調査実務では、どれか1税目だけを切り取って見るのではなく、
「3税を横断して悉皆的に調査すること」が重要だとされてきました。
税目ごとに典型的な論点は異なる
まず、法人税固有の論点として多いのは、
棚卸資産の計上漏れ、役員給与の損金不算入、税額控除の適用誤りなどです。
一方、消費税固有の論点で代表的なのは、課否判定の誤りです。
特に、税抜経理方式を採用している法人では、
課税・非課税の判断ミスがそのまま法人税にも影響します。
たとえば、贈答用の商品券の購入を課税仕入として処理していた場合、
消費税の指摘を受けると、消費税の修正だけでなく、
法人税では損金算入額が増えるため、税抜経理方式を採用している場合、所得金額の減額更正が必要になります。
このように、消費税固有の指摘が法人税に波及するケースもあります。
源泉所得税は「一番納得感が出にくい」税目かもしれない
源泉所得税で典型的なのは、
本来源泉徴収すべき報酬について、源泉をしていなかったケースです。
たとえば、個人の税理士に支払った報酬から10.21%を源泉徴収していなかった場合、
その税理士がすでに確定申告で納税を済ませていたとしても、
法人側には源泉所得税の追徴が行われます。
その後、税務署側が、税理士個人に対し、過納付となっていた所得税を返金する、という処理になるのですが、かなり無駄が多いと感じます。
源泉徴収義務としての一貫性はあるものの、「もう精算済みなのに…」という違和感を持つ人は多いのではないかと思います。今ではこのような調査の指摘は少なくなっているかもしれませんが、ややシャビーに感じてしまう指摘ではあります。
2税・3税に同時に影響する論点
法人税と消費税の2税に影響する典型例は、売上の期ズレなどです。
所得金額を修正すれば、その取引が課税売上である限り、消費税も連動します。
消費税と源泉所得税に影響するのは、
外注費が否認され、給与と認定された場合などです。
給与は消費税法上は不課税であり、かつ源泉徴収義務が生じます。
さらに、3税すべてに波及するケースとしてよく挙げられるのが、
売上除外や架空経費によって生じた簿外資金の役員個人への流用です。
この場合、
法人税では所得金額の計上漏れ
(売上除外による所得金額の計上漏れ、同額の役員報酬認容および役員給与の損金不算入)
消費税では課税売上の計上漏れ、
源泉所得税では役員給与に対する源泉徴収義務、
というトリプルパンチになります。
印紙税は別枠だが、調査ではついでに見られる
3税とは別に、調査官が印紙税を確認することもあります。
税理士には印紙税の税務代理権限がないため、
このあたりは少し立場がややこしい分野です。
最近はペーパーレス化が進んだこともあり、
印紙税調査の比重は下がっている印象がありますが、
逆にDXに移行していない取引が目立つと、
結果的に印紙税の指摘につながることもあるように感じます。
印紙税調査は、DX移行懈怠に伴う懲罰的な位置づけになっているのかもしれません。
久々に税理士っぽいことを投稿した
というわけで、1つの取引が複数の税目にどう連動するかを理解しておくことが重要だと思っています。
調査官時代を振り返ると、
3税を横断して考えられるかどうかで、
調査の見え方が変わっていたように思います。
以上、少し実務寄りの話でしたが、
税務調査の全体像を掴む一助になれば幸いです。


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