令和8年度税制改正大綱が公表され、それを受けて東京都が「東京の財源を狙い撃ちにした制度改変だ」として強く反対する見解を示しました。
今回は、東京都が何に、どのような理由で反対しているのかを見ていきたいと思います。
東京都が問題視している点は、大きく分けて二つあります。
一つ目は、道府県民税利子割という、利息にかかる税収の配分を組み替える仕組みの見直しです。
二つ目は、法人関係の地方税や東京23区の固定資産税について、「偏在是正」を理由に再配分を強める方向性が示された点です。
利子割をめぐる見直しと東京都の懸念
まず利子割です。国は、「利子にかかる税は、本来は住所地(住んでいる場所)に帰属するのが望ましい」という考え方を掲げ、令和8年度から新たに清算制度を導入する方針を示しました。これは、いったん各都道府県に入った利子割の税収を、全国的な基準で精算し直す仕組みです。狙いは、東京に集まりやすい税収を、居住地ベースに近づけることにあります。
ここで重要なのは、東京都が住所地課税そのものに反対しているわけではないという点です。東京都も、理念としては「住所地課税があるべき姿」という点は認めています。そのうえで問題視しているのは、国が「東京に集まり過ぎている」と判断した根拠となるデータの弱さです。
具体的には、調査サンプルが少なく、年度ごとの振れが大きいこと、傾向として安定しているのかが読み取れないこと、議論の過程が十分に見えないことなどを指摘しています。不十分なデータを前提に制度を作ると、実態とズレた精算が固定化され、かえって住所地課税の理念に逆行しかねない、というのが東京都の主張です。
地方税と固定資産税をめぐる「偏在是正」
次に、地方税体系全体の話です。国は、「税源の偏りが地域格差を生んでいる」として、地方法人課税の再配分をさらに強めることや、東京23区の土地にかかる固定資産税についても、偏在を理由に措置を検討する方向性を示しました。
これに対し東京都は、「東京を標的に都税収入を一方的に移す議論だ」として強く反発しています。その理由は、主に三点に整理できます。
・すでに過去の制度改正で相当額が全国に再配分されており、さらに積み増すことは、都民向け行政サービスの原資を削ることになるという点。
・「東京だけが異常に伸びている」「東京だけが偏っている」という前提自体が誇張ではないかという点。
・固定資産税は、土地や建物の価値に応じて、その所在地の行政サービスの対価として負担する性格が強く、所在地以外に配分することは税の性格を崩すという点。
また、国が根拠として用いる「財政力格差」の指標についても、大都市特有の支出需要が十分に反映されにくい理論値であり、それを前提に制度を動かすことの妥当性に疑問を呈しています。
税理士の立場から見た論点
「住所地に合わせる」「偏りをならす」という理念自体は理解しやすいものです。ただし、税制は、経過措置ではない限り、一度改正すると基本的には元に戻ることはあまりありません。だからこそ、①データの質と量、②議論の透明性、③税の性格(誰が何の対価として負担しているのか)を丁寧に積み上げていく必要があると思います。
特に、固定資産税のように「地域の行政サービスの対価」という性格が強い税目まで再配分の議論が及ぶと、制度全体の筋が崩れていく懸念があります。
個人的には、国と東京都のどちらが正しいというよりも、短期間のデータや不透明な議論を根拠に、特定の自治体を狙い撃ちに見える形で制度を動かすことが問題だと感じます。住所地課税を目指すのであれば、まずは実態を広く把握し、検証可能な形で示したうえで、段階的に制度を整えるべきかと思います。
限られた税源の奪い合いではなく、交付税を含む仕組みが努力の成果を打ち消しやすい点をどう見直すか。そこにこそ、より優先度の高い議論があるように思います。
※本記事は公表資料に基づく一般的な解説です。


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