国税OB税理士市場の歪みはどこにあるか

国税職員

去年あたりから、生成AIを使う機会が爆増しました。特に大きいのは、仕事としての執筆やメールに使うようになったことです。ちょうど本日、ある執筆案件について第1稿を書き終え、先方にお送りしましたが、その原稿作成の過程でも生成AIを活用しています。

具体的には、GoogleのNotebookLMに、法人税法、施行令、施行規則、租税特別措置法関係の条文、さらに令和8年度税制改正の政府資料をまとめて読み込ませました。そのうえで、「このテーマについて、こういう切り口で整理したい」と指示すると、該当条文や論点を引き出してくれる、という使い方です。

もちろん、最終的に文章を書くのは自分自身ですし、条文の読み違いや論理の飛躍がないかは必ず確認します。ただ、どこを当たればいいのか、どの法令が関係していそうか、という「初動」の部分が圧倒的に早くなりました。その結果、ある程度まとまった文字数の原稿を、以前よりも短い時間で書けるようになったと感じています。

このような働き方は、現職で国税職員をしていた頃には、現実的には難しかったと思います。制度上は生成AIの利用が完全に禁止されているわけではありませんでしたが、実務の中で気軽に使える環境ではありませんでした。そういう意味では、独立した今の立場だからこそできている使い方だと感じます。

仕事以外でも使ってみると、意外と役に立つ

生成AIを使うのは、仕事だけに限りません。最近、個人的に「便利だな」と感じているのは、料理の場面です。

例えば、冷蔵庫を開けて「今日はこの材料がこれくらい残っている」という状況をそのまま入力し、「2人分で、できれば簡単なレシピを」と頼むと、材料を列挙したうえで分量まで指定し、手順もかなり具体的に提示してくれます。さらに、「ホットクックを使いたい」と条件を加えると、内鍋に入れるタイミングや、設定(スープ、20分、混ぜ技ユニットなし、など)まで書いてくれるのは正直ありがたいところです。

実際、その通りに作ってみると、出来上がる料理はだいたい安定しておいしいです。ネット上のレシピの集合知をうまくまとめてくれているのかもしれません。ホットクック自体が失敗しにくい調理器具だという前提はありますが、それでも「何を作ろうか」と悩う時間が減るのは、生活面でも効率化につながっていると感じます。

「使えるかどうか」より「どう使うか」の差

生成AIの使い方については、現職の国税職員であっても、事務運営指針の中で一定のルールは定められています。ただ、個々の職員が日常的に使うには、制度的にもまだハードルが高いのが実情なのではないでしょうか。

一方で、独立している今は、責任の所在を自分で引き受ける前提で、比較的自由に試すことができます。この差は、今後さらに広がっていくのではないかと感じています。

かなり偏った見方かもしれませんが、60歳を超えて退官した国税OB税理士として活動される方の多くは、生成AIを積極的に業務に組み込む、という方向にはあまり向かわないのではないか、という印象もあります。一方で、10年免除組をはじめとする比較的若い段階で退官した国税OB税理士であれば、こうしたツールへのキャッチアップはしやすいのかもしれません。

国税若手OB税理士×生成AIという掛け算の可能性

国税OB税理士という経歴と、生成AIを実務レベルで活用するという要素を掛け合わせることで、これまで「国税OB」という看板のもとに、半ば慣習的に存在していた市場を、少し違う角度から取りにいけるのではないか、と考えることがあります。

独立してみて分かってきたのは、国税OB税理士であれば誰でも自動的に信頼される、というわけでは決してない一方で、「元国税OBによる成果物や役務提供」そのものに対するニーズは、想像していた以上に根強く存在している、という点です。
一方で、そのニーズに対して、必ずしもアウトプットの質が十分に差別化されているとは言い切れない場面もあるように感じています。

ここに、生成AIを活用しながら、調査や整理の精度を高め、一定水準以上のアウトプットを、同じ「国税OB」という立場から安定的に提供できれば、競争上の優位性は見えてくるのではないか、という仮説を持っています。

生成AIを使えば楽ができる、という話ではありませんが、調査・整理・下書きといった工程を効率化し、その分を判断や精度の担保に振り向けることはできます。その結果として、「国税OB」というクレジットを、より実質のある形で市場に提示できる余地は、まだ十分に残っているように思えます。

少し大げさに言えば、これは割安に放置されている「黄金の羽根」に近いのかもしれません。時代や環境が変わる中で、従来のやり方が通用しなくなる前に、市場の歪みを冷静に見極め、無理のない形で拾っていければと考えています。

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