退職後の健康保険、どうする? 〜任意継続か国民健康保険か〜

退職まで残りわずかとなり、「ああ、ついにこの日が来るのか」と感慨にふける時間が増えてきました。とはいえ、余韻に浸っている暇もなく、事務手続きの波が押し寄せてきます。

その中でも、多くの方が直面するのが「健康保険、どうする問題」です。

転職する方であれば、次の職場の健康保険に加入することになりますが、私のように個人事業主として独立を予定している場合、選択肢は主に2つ。

  • 任意継続保険(共済組合)
  • 国民健康保険(いわゆる国保)

どちらを選ぶのがよいのか。税理士として独立予定の私自身が実際に試算してみた内容を、同じような境遇の方の参考になればと思い、記しておきます。


任意継続保険とは

まずは任意継続保険について。

私がこれまで加入していたのは財務省共済組合(国家公務員共済組合)。この共済には、退職後も一定の条件を満たせば引き続き医療保険に加入できる「任意継続組合員制度」があります。主な内容は次のとおりです。

  • 加入条件:退職まで1年以上継続して共済組合に加入していたこと。私の場合は国税局勤務だったので当然該当します。
  • 手続き期限:退職日の翌日から20日以内に、所定の申出書を提出して掛金を納める必要あり。
  • 加入可能期間:最長2年間。
  • 給付内容:在職中の医療保険(短期給付)とほぼ同じ。ただし、傷病手当金などは対象外です。

要注意なのが、保険料(掛金)の仕組み。在職中は事業主(国)が半分負担してくれていましたが、任意継続では全額自己負担になります。つまり、保険料が実質2倍になるということです。


任意継続の保険料を試算してみた(令和7年度)

では、どれくらいの保険料になるのか?

任意継続の保険料は、「標準報酬月額 × 掛金率」で計算されます。ただし、使える標準報酬月額には制限があり、以下のいずれか低い方が採用されます。

  1. 自分の退職時点の標準報酬月額
  2. 共済組合全体の平均標準報酬月額(前年9月末時点)

私の場合、退職時の標準報酬月額は53万円でしたが、財務省の統計資料を確認したところ、共済全体の平均はおおよそ40万円程度。したがって、40万円が保険料の算定基礎になります。

掛金率は年齢によって異なりますが、私は40歳未満のため、介護保険料は不要で、短期給付分の掛金率約8.3%が適用されます。

計算すると、

  • 月額保険料:40万円 × 8.3% = 約33,000円
  • 年間保険料:33,000円 × 12ヶ月 = 約396,000円

このくらいの負担になる見込みです。


一方、国民健康保険だと?

国民健康保険(以下、国保)の場合は、所得に応じて保険料が決まります。

私が住んでいる自治体の例で、仮に前年の年収が800万円だった場合を想定して計算してみました。

  • 給与所得控除:800万円 × 10% + 110万円 = 190万円
  • 所得金額:800万円 − 190万円 = 610万円
  • 所得控除(基礎控除):43万円
  • 保険料算定基礎額:610万円 − 43万円 = 567万円

これに対して、当該自治体の所得割率をかけると以下の通りです(令和6年度基準を参考)。

  • 医療分:567万円 × 5.05% = 約286,000円
  • 後期高齢者支援金分:567万円 × 1.64% = 約93,000円
  • 均等割(40歳未満):31,160円

合計すると、

約410,160円/年

という計算になりました。


比較してどうか

私の場合で比較すると、年間の保険料は次のとおりです。

  • 任意継続:約396,000円
  • 国民健康保険:約410,000円

初年度については、若干ですが任意継続の方が安いという結果になりました。

ただし、ここで重要なのは「2年目以降」の話です。

任意継続の保険料は、在職時の標準報酬月額に基づく固定計算のため変動しません。一方、国保の保険料は前年の所得に基づいて毎年見直されるため、退職後に所得が大きく減る場合は、翌年から保険料もグッと下がる可能性があります。

そのため、よくある選択肢としては、

「初年度は任意継続、2年目から国保」

というハイブリッド型のパターンです。


結局、どっちがいいのか?

健康保険の選択に「これが正解」というものはありません。保険料だけでなく、次年度以降の所得見込みや、医療給付の内容、手続きのしやすさなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。

ただ、元国税職員で税理士として独立予定の私のように、「ある程度の収入は確保したいけど、しばらくは収入が読みにくい」という状況にある方にとっては、初年度は任意継続、2年目から国保という選択が比較的バランスが取れているように思います。

退職後、自由を手にする代わりに「選ぶ責任」も増えます。どちらを選ぶにせよ、「なんとなく」ではなく、ざっくりでもシミュレーションしておくと、気持ちがぐっとラクになります。


以上、退職後の健康保険選びで悩んでいる方の一助になれば幸いです。私もまだまだ勉強中ですが、今後もこのあたりの実体験をブログで発信していけたらと思っています。

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