最近の若い国税職員はヤバいのか

「最近の若いのは…」

これはもう、古い新聞のエッセイでもよくみかけるようなセリフです。時代を問わず、中高年層は若者を見て「あいつらはダメだ」と言い、若者は若者で「おっさんたちは時代遅れだ」と思っています。これはもう、地球の自転と同じくらい普遍的な現象なのかもしれません。

国税の職場でも、「最近の若い職員はヤバい」という声がちらほら聞こえてきます。

「電話を数分保留にしてしまう」 「話し方が社会人としてなっていない」 「平気で嘘をつく」 「ちょっと体調が悪いだけで休む」 「寝坊して上司の電話で目覚める」 「納税者とトラブルを起こしがち」 「上司に代われと言われたら、オウム返しでつなぐ」

こうしたエピソードを聞くと、確かに「ヤバい」のかもしれません。しかし、それは本当に彼らが「ヤバい」からなのでしょうか。

国税の職場環境はむしろ良くなっている

私は、むしろ職場環境は年々改善されていると感じています。

かつては「残業が多い=優秀」という価値観がありました。税務調査で細かく指摘すればするほど仕事が増えるため、必然的に残業が増えました。そして、夜遅くまで働くことで「頑張っているな」と評価される風潮がありました。なお、残業代はほとんど出ませんので、サビ残です。頑張っているなという評価は子供だましのおもちゃの勲章のようなものです。

しかし今では、無駄に残業しているほうがダサいという考え方になりつつあるような気がしています。

また、民間に遅ればせながら公務員の働き方においてもDX化が進み、紙決裁のような煩雑な作業が少しずつ減ってきました。その結果、仕事はやや効率化され、早く帰れるようになっています。さらに、月に1回の休暇取得が推奨され、上司が休暇の理由を詮索することもなくなりました。

昔は「休む=サボり」と思われがちでしたが、今では「休む=大事な自己管理」という考え方に変わりつつあります。確かに、寝坊で遅刻するのは問題ですが、「ちょっと体調が悪いから休む」のは、むしろ健全な判断ともいえるのではないでしょうか。

若手の「感度の高さ」

最近の若手は、実は彼らなりにしっかり将来を見据えているような気がします。

ある日、若手職員と飲みに行った際のことです。中年層の間では「あいつはダメだ」と評判の職員がいましたが、話を聞くと、彼は定時で帰って予備校に通い、税理士試験の勉強をしていました。

「10年で税理士試験を免除できる状態になりたい」

そう語る彼は、ただ仕事を適当にやっているわけではなく、自分なりの人生設計を持っていました。仕事に命を懸ける時代ではなくなっているのです。職場での評価に固執するのではなく、自分のキャリアを主体的に考える。これは、ある意味では極めて合理的な選択だといえます。

彼らのような若手が、定時後の時間を活用し、次のステップへ向けて努力しているのを目の当たりにすると、「最近の若いやつは…」という言葉が、いかに一面的な見方であるかがわかります。

結局、昔の中年も似たようなものだった

そもそも、今の中年層が若手だった頃も、当時の中高年から「最近の若いのは…」と言われていたはずです。時代が違えば価値観も違います。だからこそ、お互いに「理解できない」と感じるのは当然です。

昔の中年層は、「職場で頑張って出世し、安定した地位を得る」ことが生き残る道でした。しかし、今の若手にとっては、出世=負担が増えるだけという側面もあります。DX化が進み、テクノロジーが仕事のあり方を変える中で、必ずしも「職場で評価されること」がゴールではなくなっています。

だから、「最近の若い国税職員はヤバい」と言われるのは、ある意味で当然のことです。ですが、それは彼らが本当にダメだからではなく、単に見えている部分が違うだけなのです。

おじさんたちが「大丈夫か?」と心配するまでもなく、若者は若者なりにしっかりやっています。そして、その姿を捉えられないのは、もしかすると加齢による認知の歪みなのかもしれません。

結局、「最近の若いのは…」というセリフを口にした時点で、自分が「そういう年齢」になったのだと自覚するしかないのかもしれません。

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