老後を遅らせるムーブ——「人的資本」が尽きるその日まで

ちょっと前に「LIFE SHIFT」という本が話題になりました。100年時代の到来に備えて、従来の人生設計を見直す必要がある、的な趣旨だったと記憶しています。たしかに、100歳まで生きるのが当たり前になったら、昔ながらの「60歳で定年→余生は年金暮らし」というプランは、時代遅れになりつつあります。

そもそも、「老後」とは何でしょうか。定義はいろいろありますが、この記事では 「人的資本をすべて失った状態」 と考えてみます。人的資本とは、「自分の労働によって収入を得る力」のことです。多くの人は、定年を迎えると収入の柱を失い、金融資産に頼るしかなくなります。

経済的な不安を解消するもっともシンプルな方法は、「老後を短くすること」。仮に80歳まで働けば、老後の期間はぐっと短くなります。

40歳から考える「老後」のリアル

日本人の平均寿命は、男性81歳、女性87歳くらい。でも、これは生まれた瞬間の平均値。実際には、40歳まで生きた人があと何年生きるのか? という視点で見ると、もう少し長くなります。

仮に40歳時点での平均余命が45年だったとしましょう。すると、85歳くらいまでは生きる計算になります。もし60歳で定年退職すると、そこから25年間は無収入(または年金頼み)で過ごさなければならない。

…長いですよね。

25年もの間、働かずに資産を取り崩す生活をするのは、経済的にも精神的にもなかなかハードです。だったら、そもそも老後を短くする という発想のほうが現実的です。

「働き続ける」と言っても、フルタイムとは限らない

「80歳まで働く」と聞くと、「そんなの無理!」と思う人もいるでしょう。でも、ここでのポイントは 「働き方を変える」 ことだと思います。

例えば、

  • 会社員なら定年後に再雇用や嘱託勤務でゆるやかに働く
  • フリーランスや個人事業主なら、仕事量を調整しながら続ける
  • セミリタイアして、好きな仕事を細々と続ける

など、働き方はいくらでもカスタマイズできます。週5のフルタイム勤務ではなく、週2~3日のペースでも働き続けられれば、それだけ老後資金の取り崩しを遅らせることができます。

私自身、税理士という仕事を選びましたが、これは「定年がない」職業のひとつ。幸い、人的資本を活用しながら、第二、第三の青春を謳歌する道が開けているような気がします。

「60年、やりたくないことを続ける」は無理ゲー

ここで改めて考えたいのは、「働く期間が長くなるなら、そもそも好きなことを仕事にした方がいいのでは?」 ということ。

仮に23歳から80歳まで働くとすると、労働期間は57年間。
「60年近く、やりたくないことを続ける」ということは、素敵な地獄へようこそということです。

だとするのであれば、少しでも興味が持てる仕事、続けやすい仕事を選び、「老後を遅らせる」という戦略を取るのが合理的ではないでしょうか。

税理士的視点:「老後を短くする」ことの経済的メリット

税理士的な視点で見ても、「老後を短縮すること」には経済的なメリットがあります。例えば:

  1. 年金を繰り下げ受給できる
    • 年金は65歳から受け取れますが、70歳まで繰り下げると受給額が42%増えます。老後を遅らせることで、年金収入を増やすことができます。
  2. 貯蓄の取り崩し期間を短縮できる
    • 80歳まで収入があれば、60歳で完全リタイアするより資産寿命を延ばせます。
  3. 健康維持にもつながる
    • 経済的な話ではありませんが、「仕事を続ける=社会とのつながりがある」ことは、健康寿命を延ばす大きな要因のひとつです。

老後は「決められたもの」ではなく、自分でデザインするもの

従来の「60歳で引退して、あとはのんびり」というスタイルは、100年時代にはフィットしなくなっています。

老後は「決められた期間」ではなく、自分の意思で長くも短くもできるもの。人的資本をうまく活用すれば、80歳になっても「まだまだ現役」という人生も十分可能です。

「働かなくて済む人生」がゴールではなく、「自分に合った働き方を続けながら、楽しく生きる」 という選択肢もある。

そんな視点を持つことで、未来の不安が少しでも軽くなれば良いかなと思います。

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