~お金を使い切る人生、目指せる?~
「ゼロで死ね」。なかなか刺激的なフレーズですが、これはビル・パーキンスの著書『Die With Zero』が提唱する考え方です。要するに、「稼いだお金をしっかり使い切って、後悔なく人生を終えよう」という話。
「せっかく頑張って稼いだお金を、結局使い切れずに死ぬのってもったいなくない?」
「お金はあの世には持っていけないんだから、今この瞬間を最大限楽しむべき!」
確かに理屈としてはわかります。でも、実際にこれを徹底して実践できるのかというと、話はそう単純じゃない気がします。
意外と減らない資産
私自身、いま公務員として働きつつ、近々独立を考えています。当然ながら、独立後は数年間、収入が不安定になり、貯めてきたお金を取り崩して生活することになるでしょう。
「資産が減っていく……!」
と、少しはヒヤヒヤするかと思いきや、よくよく考えると、「思ったより減らないんじゃないか?」という気もしています。なぜなら、人間は意外とお金を減らすことが苦手だから。
退職後のシニア世代を見ても、貯金を取り崩すどころか、むしろ増やしてしまう人が多いそうです。いざ「お金を使え!」と言われても、長年の節約習慣や「老後の不安」が邪魔をして、なかなかパーッと使えない。
「Die With Zero」を実践しようとしても、結局「思ったより使えずに終わった……」という未来が待っているのかもしれません。
お金の価値は年齢で変わる
『Die With Zero』では、「20歳の100万円と70歳の100万円は価値が違う」的なことが書かれています。
若い頃の100万円は、海外旅行や趣味、自己投資など、ワクワクすることに使いやすい。でも、70歳になると「そもそも体力的にあまり楽しめない」「健康不安がある」といった理由で、お金の価値を引き出しにくくなる。
確かに、若いうちにしかできない経験があるのは間違いないし、「老後のために」とお金を取り置きすぎると、その間に「体力」や「時間」という資本が目減りしてしまう。
でも、一方で「年齢を重ねると、若い頃にはなかった楽しみが生まれる」こともある。たとえば、70歳になってから最高の温泉宿に泊まるのは、それはそれで贅沢な時間だろうし、子どもや孫に何かしてあげる喜びもある。
お金をどう使うかは、単純に「今 vs 老後」の二元論ではなく、その時の価値観やライフステージに合わせたバランスが必要なんじゃないかと思います。
「幸福の資本論」的な視点
「Die With Zero」の議論をするとき、『幸福の資本論』の考え方も参考になるかもしれません。この本では、人生の幸福を**「金融資本」「人的資本」「社会資本」**の3つの要素で考えます。
- 金融資本(お金・資産)
- 人的資本(健康・スキル・能力)
- 社会資本(家族・友人・コミュニティ)
「Die With Zero」は金融資本にフォーカスした考え方だけど、実際はこの3つの資本をバランスよく保つことが大事。たとえば、
- お金はあるけど健康がなくて旅行に行けない
- お金があっても、付き合う人がいなくて孤独
なんて状態では、結局お金を持っていても幸福にはつながらない。逆に、お金が多少少なくても、健康と良い人間関係があれば、それだけで幸せを感じられることもある。
「Die With Zero」を意識するのはいいけど、「お金をゼロにすることが目的」になってしまうのは本末転倒。最終的に大事なのは、3つの資本のバランスだと思います。
「ゼロで死ぬ」 vs 「ちょっと余裕を持たせて死ぬ」
さて、ここで有吉弘行さんの話を思い出します。
彼はかつて「電波少年」の企画後の数年間、どん底の生活を経験し、その後、成功を掴みました。そして、あるテレビ番組でこんな趣旨のことを話していました。
「預金残高ゼロの状態で死ぬよりも、数千万円あって『ああ、余裕をもたせながら死ぬことができたな』と思いながら死ぬ方が精神衛生的にいい」
たしかに。完全にゼロにしようと思うと、どうしても「使いすぎて寿命より先に資産が尽きたらどうしよう」という不安がつきまとう。
また、「お金がゼロだと、最後の選択肢がなくなる」というのも気になる。たとえば病気になったとき、あるいは家族に何かあったとき、最低限の資産があれば安心材料になる。
「選択肢を持ったまま死ぬ」 これが理想なのかもしれません。
結局、どうするのがいいのか?
私自身、「Die With Zero」は面白い考え方だと思うし、実践したい気持ちもあります。でも、実際にやってみると、「思ったより減らない」 という未来も見えてきます。
だから、結論としては
✅ お金は貯めるだけじゃなくて、ちゃんと使う意識を持つ
✅ でも、完全にゼロにしようとするのではなく、ある程度の余裕は持つ
✅ 金融資本(お金)だけでなく、人的資本・社会資本も意識する
結局のところ、「ちょうどいい着地」が理想なんじゃないかと思います。まぁそれが一番難しいから議論になるのかと思いますが。死ぬときに、使い切れずに後悔するのはイヤだけど、「お金が尽きる恐怖」に怯えながら生きるのも違う。
「お金も、人生も、いい感じのバランスを取る」
それが、無理なく幸せに生きるコツなのかもしれません。
言うのは簡単ですが、実践が難しいですね。
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