税理士証票交付式に出席したときのことを思い出します。
ちょうどタイミングが重なったのか、60代以上で国税を退官して税理士登録をする方が多かった印象がありました。署内で見たことがある顔もちらほらいて、早速旧知のメンバー同士で名刺交換をし合い、盛り上がっている姿がありました。
あの独特の「国税のノリ」が独立後も続いているのを見ると、少し距離を置きたい気持ちにもなりますが、今回はその話が本題ではありません。
その場で聞こえてきた会話の中心は、どこに事務所を構えたかという話題でした。
「うちは日本橋」「うちは麹町」「私は神田」…
いわゆる五大署(麹町・神田・日本橋・京橋・芝)の管轄に集中しており、都心三区周辺に事務所を置くのが当然という雰囲気すら感じました。
都心に開業したがる国税OBの感覚が自分にはよくわからない
私には、この感覚がどうしても腑に落ちませんでした。
もちろん、都心部に事務所を構えることでプラスに働く要素はいくつも考えられます。
- クライアントが都心の立地を重視する可能性
- 都心に事務所を承継する予定がある
- 退職金があるため家賃負担が比較的軽い
- 高単価のクライアントを取りやすいという期待
こうした背景がある方もいるのでしょう。
しかし、それにしても「60歳を超えてなお、毎日わざわざ都心に通勤する生活を選ぶ理由」は、私には今もはっきりと見えていません。
国税を退官してようやく通勤電車から解放されるタイミングです。
それなのに再び満員電車や長距離通勤に戻る選択をするのは、どうにも不思議に感じます。
私は府中市の自宅兼事務所という選択をした
一方の私はというと、府中市の自宅(賃貸)をそのまま事務所にしました。
事務所への通勤時間はゼロです。
プラスの出費という意味においては事務所家賃も実質ゼロです。
支出で増えていくのは、税理士会費や会計ソフトのサブスクなど、事務所の立地とは関係ない固定費ばかりです。
都心に拠点を置くという発想自体が、自分のなかでは最初からありませんでした。
クライアントとのやり取りもオンラインが基本であり、移動の利便性で困る場面も今のところありません。
自宅兼事務所でもオンとオフの切り替えに支障はない
よく「自宅兼事務所はオンオフの切り替えが難しいのでは」という声を聞きます。
しかし、私自身はそこに不便を感じていません。
むしろ、意図的にオンとオフを明確に分けない生活をしたいと考えていました。低電力モードとフル稼働モードの状態をシームレスに行き来するイメージでしょうか。
こういう生活スタイルが、自分には合っています。
「事務所へ出勤する」という概念がそもそも不要になったことで、時間の使い方が柔軟になりました。
郊外のほうが「税理士1人あたりの法人数」は多い可能性がある
都心は法人の数が多いので、顧客候補が集まりやすいというイメージがあります。
しかし、その一方で税理士事務所の数も膨大です。
つまり、税理士1人あたりの“市場の大きさ”で考えると、必ずしも都心が有利とは限りません。
これは書籍『税理士なら誰でも年収3000万円』でも指摘されている点で、ランチェスター戦略の観点等から、独立するなら僻地も選択肢という話と通じます。
私も開業前に、
「区域内の法人の数 ÷ 税理士の数」
の割合を地域別に計算して、どの区域が有利かを比較したことがあります。
府中市は数字的に悪くありませんでしたし、立川市もなかなかよい数字でした。
結果的には、妻の実家が府中にあることも後押しになり、今の場所に落ち着きました。
事務所の立地をどう考えるか問題
都心で開業したい人には、その人なりの理由があります。
一方で、私のように自宅兼事務所にしたい人もいます。
私は、時間もお金も人生も柔軟に使える生活を好むので、今の働き方が合っています。
そして、この場所で淡々と仕事を積み重ねていけば、どこで開業していても必要な方に届くのではないかと考えています。

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