話が噛み合わない──「若いうちにお金を使え」という助言について考える

考え

「若いうちからお金は使ったほうがいい」という言説を、よく耳にします。
年を重ねるほど、お金から引き出せる価値が弱まるという説明は、たしかに直感的に理解できます。身体的な制約や時間の制約が増えていくので、同じ金額でも若い時のほうが多くの体験を得られるという考え方です。

たとえば、20歳の人が自由に使える100万円と、60歳の人が自由に使える100万円が「同じ価値ではない」という感覚は、多くの人に共通しているはずです。

しかし、この助言について考えてみると、どうも話が噛み合っていないと感じる部分があります。


「若いうちから使え」と言う人の多くが、若者ではない

「お金は若いうちに使え」と語る人の多くは、40代以降の方です。
一方で、20歳前後の人が同じ主張をしている例は、あまり多くありません。つまり、「若いうちに使え」と語る側は、すでに若者ではない人たちです。

これは価値観の違いを反映しているだけでなく、そもそも“語っている立場”が異なるという点が重要です。

40代以降の人は、一定の資産形成や仕事上のポジションを経たうえで、「もっと早く使っておけばよかった」という反省から助言しているケースが多いように思います。この背景を理解せずに表面的に受け取ると、本質を取り違える可能性があります。


「お金を使う力」は確かに重要だが、前提が異なる

お金を使う力は、確かに重要です。
しかし、この“使う”という言葉が指している中身が、世代によってまったく違っていることが、話が噛み合わない理由の一つだと思っています。

資産を築いた年配の方が言う「やりたいことに使え」という助言の背景には、次のような前提がある気がします。

  • その「やりたいこと」が、生産行為である
  • お金を使うことで、新しい価値が生まれると理解している
  • 経験を投資とみなし、回収のイメージを持っている

このように、お金の使い方が“生産行為”として機能する人が語っていることが往々にしてあります。


多くの人は「消費」しかイメージできない

一方で、ほとんどの人は、自分の“やりたいこと”と言われても、それが価値創造につながる生産行為とはほとんど結びつきません。

偏見もありますが、実際、多くの人が思い浮かべるのは、酒、タバコ、ギャンブル、ブランド品、遊興費…短期的な消費です。

もちろん、これらを否定するわけではありません。
ただ、資産家や自己実現型の人が言う「お金を使え」という言葉は、こうした短期消費を意味していないようにも思えます。

では、一般的な20代が「よし、言われたとおり若いうちに使おう」と考えた時に、自然と“生産行為への投資”に向かえるかといえば、現実にはそう簡単ではありません。

そもそも何に使えば生産性が高まるのか、何が将来の価値につながるのか、その判断基準自体を持っていない人が大半です。
その結果、「若いうちに使え」という言葉だけが独り歩きし、短期消費に流れてしまうというズレが生じます。


“生産行為に使う”とは何か

では、生産行為に使うとは何を指しているのでしょうか。

私が思いつく範囲は以下のような感じでしょうか。

  • 技術や知識の習得
  • 健康を維持するための取り組み
  • 信頼できる人との関係づくり
  • 表現や創造につながる活動
  • 小さくても継続可能な投資

こうした使い方は、回収までの時間が長いため、若い時ほど向いています。
しかし、具体的なイメージが持てないまま「若い時は使うべき」とだけ言われても、多くの人には結びつかないのが実情です。

つまり、助言者が想定している“使い道”と、受け取る側の“使い道”が根本的に異なるということです。


助言が噛み合わない理由は「前提の差」

「若いうちに使え」という助言そのものは間違っていないと思います。
しかし、その言葉を発する側と受け取る側とで、前提が大きく異なっている場合があります。

  • 助言者:
     “生産活動への投資”という前提で語っている
  • 若者側:
     “消費行動への支出”として受け取りやすい

このズレこそが、話が噛み合わない理由なのだろうと思います。

お金を使う力は確かに重要ですが、その前提として、自分が何を生み出したいのか、何に価値を感じるのか、といった基盤を整えることが必要です。
それがないまま助言だけ取り入れてしまうと、期待した方向とはまったく違う結果になりかねません。

今後も、自分自身の使い道を冷静に考えつつ、「生産行為としての支出」と「単なる消費」を丁寧に区別していきたいと思っています。

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