バーで隣に座っていた人

結婚前、私は人形町に住んでいました。人形町は、適度に飲み屋があり、当時は大人がしっぽり楽しめるバーも多い街でした。ひとり飲みが好きだった私は、そんなバーでたくさんの顔見知りを作っていました。

そんな中、ある日「バーで隣に座っていた人」との出会いについて話したいと思います。

人形町のバーとR氏

私がよく通っていたバーは、HUBではないものの、HUBに近い雰囲気の店でした。外国のパブを思わせる空間で、エリートサラリーマンや外国人がよく集まっていました。そんなバーで、私の隣に座っていたのが「R氏」です。

彼は当時28歳?くらいで、私より3つ下。関西出身でとにかくよくしゃべる、明るい性格の男性でした。さらに、アメリカの大学を卒業しており、英語はペラペラ。不思議な魅力を持った人物でした。

初対面のとき、私は「人形町に引っ越してきたばかりで、まだお店をよく知らない」と話しました。すると、彼は「任せとけ!」と言わんばかりに、いろんな店を紹介してくれました。

それからは、仕事終わりに飲みに行ったり、合コンを企画したりと、頻繁に交流するようになりました。あるとき、「中央区の移動はキックボードが最速」というガセ情報を彼から教えられました。結果、私はすっかりそれを信じてしまい、二人で朝からキックボードで街を散歩したり、銭湯に行ったり、上野公園まで走らせて鯉に餌をやったりしました。今考えると、かなり無茶なことをしていたと思いますが、当時は純粋に楽しかったです。

R氏、フィリピンへ

そんなR氏が、突然、外資系証券会社に転職し、フィリピンへ行ってしまいました。彼の仕事は企業の格付けなど、いかにもエリートっぽい内容でした。

さすがに寂しくなった私は、勢いでフィリピンまで会いに行くことにしました。すると、そこにはまた予想の斜め上をいくR氏がいました。

彼は、フィリピンでシェアハウス事業も立ち上げており、「宿代浮くし、うちに泊まれば?」と言われました。そのため、彼のシェアハウスに寝泊まりすることにしました。

フィリピンでは、カルチャーショックの連続でした。移動はタクシーではなく「Grab」というアプリを使い、日本のタクシーよりはるかに安い料金で長距離移動ができます。さらに、彼に初めてのカジノへ連れて行かれ、カジノ内のバーでワールドカップの試合を観戦するという、まるで映画のような体験をしました。

R氏、再び日本へ。そして……

その後、R氏はフィリピンを去り、今度は地元である関西の大手企業に就職しました。私が結婚した1〜2年後、彼も結婚したらしく、元気にやっていると風の噂で聞いていました。

そして最近、久しぶりにR氏から連絡が来ました。

「税金関係の仕事してたよね?今、会社を起こして1期目なんだ。税理士として独立したらうちの税務申告お願いしたいんだけど。」

まさかの展開です。

R氏が起業し、その最初の税理士として私を頼ってきたのです。思えば、これまで彼からたくさんのものをもらってきました。楽しい時間、面白い経験、キックボードでの無謀な疾走。

「これは恩返しのタイミングかもしれない。」

そう思いながら、独立したらR氏の会社の税務申告を受けようと強く誓いました。

出会いが未来を作る

ふと考えると、「バーで隣に座っていた人」との偶然の出会いが、こんな形でつながるとは思いもしませんでした。もちろん、最初から気が合っていたからこそ、今でも関係が続いているのだと思います。でも、この出会いがなければ、今のこの仕事の話もなかったわけです。

「だから今すぐバーに行け!」とは言いませんが(笑)、新しいことに挑戦すると、新しい出会いが広がるかもしれません。そして、その出会いが何年後かに思いもよらぬ形で人生を動かすこともあります。

だからこそ、出会いは大切にしたいものです。

……とりあえず、久しぶりにR氏と飲みに行こうと思います。今度はキックボードなしで。

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