独立してからあらためて思うのですが、「ないものねだりをしない」という姿勢はとても大切です。
公務員には公務員の良さがあり、民間には民間の良さがあり、独立には独立の良さがあります。どれも優劣の話ではなく、それぞれの環境に応じて獲得できるもの、失うものがあるだけなのだと思います。
「安定」とはそもそも何か
公務員=安定、という言葉はよく耳にします。
ですが、私は国税に勤めていた頃、そんなに「安定」に守られているという実感はありませんでした。確かに給与は大きく上下せず、生活の見通しは立ちやすい。それを安定と呼ぶのでしょう。
一方で、メンタルを壊してしまったり、不幸にも自ら命を絶ってしまった方を何人か見てきました。
そうなると、お金の安定がどれほど価値を持つのか、わからなくなります。
「安定しているから幸せ」ではなく、
「自分が納得して選んだ道なのか」が、やはり重要なのだと思います。
公務員の当たり前は、外の当たり前ではない
公務員を長く続けていると、どうしても「公務員向きのマインド」が身についていきます。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、その感覚が強く染みつくと、民間業界や独立の世界では足かせになってしまうことがあります。
例えば、休日出勤のフォローや各種の制度的な守り。
独立すれば当然ながら、それらはなくなります。
「保証」を求め続けた状態で飛び込むと、途端に苦しくなる。
以前、私の匿名質問箱にこんな趣旨の相談がきました。
「徴収部門出身の私は、税理士になっても需要ないですよね…?」
この質問の裏には、「大丈夫だと言って安心させてほしい」という期待が透けて見えます。
もちろん、私は否定はしませんが、そこに保証を求め続ける限り、独立は向かないだろうな…とも感じます。
リスクは取りたくないけど、大きなお金は欲しい。
安定は失いたくないけど、自由も欲しい。
気持ちはわかります。
ですが、いいとこ取りはできません。
海水魚を淡水に放り込むかのようなもの
公務員 → 民間 → 独立
これらは、たとえるなら「生態系の違う世界」です。
淡水魚は淡水で生き、海水魚は海水で生きる。
どちらが上でも下でもなく、違う世界なのです。
学校の先生がいきなり中小企業に転職したら「なんでこんなにプロセスが雑なんだ」と驚くかもしれません。
逆に民間から公務員になれば「なんでこんなしょうもないことに決裁が必要なんだ」というギャップに悩むかもしれません。
そのくらい、文化も、前提も違う。
だからこそ、環境を変えるときは「覚悟」が必要だと感じます。
後悔しない選択がいいですね
私は公務員を辞めて独立しました。
それによって得たものもあれば、失ったものもあります。
たしかに安定は手放しましたが、そもそも私は安定を欲してはいなかったのだと思います。
保証されない環境に飛び込むというのは、不安もあります。
しかしその不安すら、自分の意思で選んだ道ならば強さに変わる。
大槻ケンヂと絶望少女達の『人として軸がぶれている』という曲の歌詞に、
「ブレブレブレブレブレまくって、震えているのわかんねぇようにしてやれ!」
という一節があります。
まさにあの精神で生きたいです。
保証の中では決して得られなかったものが、今はあります。
安定とは「安く定まる」と書きます。
安く定まるよりも、自分の足で変えていけるほうが私は性に合っています。
それが不安定でも、後悔しない方を選んでいきたい。
今日も、内心は震えつつ、外見は堂々として、仕事をこなしていこうと思います。


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