AI前提で税理士事務所を組み直す時代が来たと感じた話

税理士独立

スタッフ0人の税理士が、Claude Codeで顧問先60社を1人で回している全手法」という投稿を読んで、単に便利そうだと思っただけでは終わりませんでした。内容として目を引くのは、AIを補助的に使うのではなく、日々の業務の流れそのものに組み込んでいる点です。関連する説明では、毎晩の自動処理、判定ルールの整備、難しいものだけ人が見る運用、さらに freee や Gmail などとの連携まで触れられていました。

税理士業務では、判断そのものよりも、確認、転記、定型処理、差分の見直しのような周辺作業がかなりの割合を占めます。そこをAIで薄くするだけでも意味はありますが、今回の話はもっと踏み込んでいました。人が最初から全部見る前提ではなく、AIが先に流し、人は引っかかった所だけ見る。その順番に変わっているのが大きいと思います。

ひとり税理士にとって設計の自由は重要かも

AI活用の話になると、すぐに「人手不足が解消される」「スタッフを減らせる」という方向に話が行きがちです。もちろんそれも一面ではあります。ただ、ひとり税理士にとって本当に大きいのは、最初から事務所の作り方を選び直せることだと思います。

既にスタッフが何人もいて、仕事の分担ややり方が固まっている事務所だと、AIを入れるにも既存の流れとの調整が必要です。一方、ひとり税理士で、しかも顧問先数がまだ極端には多くない段階であれば、最初から「これはAIに読ませる」「ここは自分しか触らない」「この確認は定型化する」という形で組みやすいです。私はここにかなり大きな意味があると感じました。

要するに、後から効率化するのではなく、最初から効率化された形で事務所を設計できるということです。これは今の時期のひとり税理士にだけある、かなり強い利点だと思います。

AIに任せると危ない部分は、むしろ最初に見えやすくなる

今回の話で重要だと思ったのは、危ない部分を残したまま全部自動化しようとしていないことです。関連する情報では、給与、税金、借入返済など、触らせない領域を先に除外しているとされていました。

ここはかなり現実的です。AI活用で失敗しやすいのは、全部できると思ってしまうことではなく、どこまでなら任せられるかの線引きが曖昧なことです。逆に言えば、その線引きができる人ほど、AIを安全に使いやすいのだと思います。税理士が有利なのは、まさにこの線引きを業務知識として持っている点かもしれません。

結局、問われるのは「判断基準の言語化」か

今回の投稿群を見ていて、もう一つ印象に残ったのは、コードを書けるかどうかより、業務の型を言葉にできるかが大事だという点です。別の投稿では、勘定科目の判定ルールや例外パターン、顧問先ごとの特殊処理をテキストにしてAIへ渡している、と説明されていました。

これは税理士にとってかなり示唆的です。実務に慣れてくると、自分の中では当たり前になっている判断が増えます。しかし、その「当たり前」は、口で説明しようとすると意外と難しいものです。たとえば、同じ飲食費でもどこで線を引くのか、同じ外注費でも何を見て違和感を持つのか、といった感覚です。

AIを使う局面では、こうした暗黙の判断を少しずつ言語化しないと前に進みません。自分はここに少し迷いがありました。AIの勉強というと、つい新しい道具の操作を覚えることだと思いがちですが、実際には自分の仕事のやり方を言葉に直す作業のほうが本体なのだろうと思います。

子育てと両立するなら、労働時間を減らす方向で考えたい

AIで効率化できれば、同じ労力でより多くの顧問先を持てるようになるかもしれません。それは売上面では分かりやすい利点です。他方で、同じ顧問先数のまま労働時間を減らす、という使い方もかなり重要だと思います。

特に子育てと両立する時期は、まとまった作業時間が取りにくくなります。毎日同じ時刻に長時間働ける前提で仕事を組むのが難しくなります。そのとき、定型処理が先に進み、見るべき所だけが残る仕組みは、そのまま生活との相性の良さにつながります。

税理士事務所のAI活用は、単なる流行ではなく、働き方の設計の話なのだと思います。今後は「AIを使う税理士事務所が増える」というより、「AIを前提に作られた税理士事務所」と「そうでない事務所」の差が少しずつ広がっていくのかもしれません。少なくとも、ひとり税理士である以上、この論点からはもう逃げにくいと感じています。

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