税務調査を録音してもよいのか

税務調査

税務調査の連絡を受けると、多くの事業主の方がまず気にするのは、調査官とのやり取りをどう残すかだと思います。特に不安になるのは、後から「言った」「言わない」の話になることです。録音ができれば、その場のやり取りを後で確認できますし、少なくとも心理的な安心感はあります。

一方で、録音すると違法ではないか、税務署の心証を悪くしないか、調査がこじれないかという別の不安も出てきます。ここが悩ましいところです。録音できるかどうかの問題と、録音したほうが得かどうかの問題は同じではありません。

少なくとも、明確な禁止規定が見当たらない

まず整理しておきたいのは、税務調査の録音について、一般の対面調査を対象にした明確な禁止規定は、国税庁の公表資料からは見つけられないという点です。これに対し、オンラインで行う税務調査や行政指導については、国税庁のQ&Aで録音、録画、文字起こしなどの利用を禁止すると明示されています。つまり、少なくともオンラインについては、禁止をはっきり書いています。

税務行政におけるオンラインツールの利用に関するQ&Aの問16

裏を返せば、対面調査については、同じような形で「録音禁止」と明文化された公表資料は見当たりにくい、ということでもあります。ここから直ちに「だから自由に録音してよい」とまでは言えませんが、少なくとも、禁止の根拠が最初から非常に明快というわけではないのだと思います。

録音をやめるよう求められることがある

現場でどうなるかというと、そこは別の話です。税務調査の録音が問題になった裁判例では、調査担当者が録音の中止を求め、録音され得る状態での調査を行わなかった対応を、裁判所が合理的かつ適法とみたものがあります。そこでは、守秘義務の問題や、必要かつ十分な調査を実施しにくくなることが理由として挙げられていました。

つまり、録音自体が直ちに違法と断じられているわけではなくても、税務署側が「その状態では調査を進めない」と対応してくる可能性は十分あります。ここがこの論点のややこしいところです。法律上の白黒だけではなく、実務上の主導権が税務署側にかなりあるからです。

納税者側だけ録音を嫌がられることには、やはり違和感

この論点で私が引っかかるのは、国税当局は、物証が乏しい場面では質問応答記録書という形で、調査官と納税者のやり取りを文章化し、証拠資料として使うことがある点です。もちろん、内容に納得しなければ署名しないという対応は可能です。

ただ、それでも、調査官側は問答を記録として残しうる一方で、納税者側が録音しようとすると嫌がられる、という構図には不均衡さがあります。調査官側は「正常な状態で調査できない」と言い、納税者側は「こちらも録音がなければ正常な心理状態で受けにくい」と感じる。このずれは、実務の中でかなり大きいと思います。私はここに、制度上きれいに説明しきれない部分が残っているように感じます。

録音は「絶対にすべき」でも「絶対にやめるべき」でもない

では、税務調査が来たら録音すべきなのかというと、そこは単純ではありません。録音があれば、後から「そんなやり取りはしていない」と具体的に反論できる余地が広がることは確かです。特に質問応答記録書の内容が実際の会話とずれていると感じる場面では、録音の価値はかなりあります。

その一方で、録音を始めたことで調査官が態度を硬化させたり、その場のやり取りがぎくしゃくしたりする可能性もあります。録音そのものより、「録音している納税者」として見られることの影響を無視しにくいわけです。

録音には、証拠保全としての合理性があります。他方で、実務上は調査の進み方に影響することもあります。だからこそ、録音の可否を抽象的に議論するより、自分が何を守りたいのか、後の争いを見据えて証拠を残したいのか、その場の円滑さを優先したいのかを意識したほうがよいのだと思います。

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