税務調査で「修正申告を出してください」と言われたら応じるべきか

税務調査

税務調査の終盤で、調査官から「修正申告をお願いします」と言われることがあります。納税者側としては、半ば義務のように感じやすい場面です。

国税庁のFAQは、この点をかなりはっきり書いています。修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまで納税者の任意判断です。応じなければ、その調査結果に基づいて更正等の処分、つまり税務署側の処分に進むことになりますが、勧奨に応じなかったこと自体を理由に、基本的に不利な取扱いを受けるものではないとされています。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)の問25

修正申告は「出さなければならない書類」ではなく、「自分で是正することを勧められている書類」です。税務調査の文脈では圧力を感じやすいですが、法的な性質としては別です。

修正申告を出すと、不服申立てができないという説明は半分正しく、半分ミスリード

上記の国税庁のFAQには、「修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできるが、不服申立てをすることはできない」とあります。これ自体、字面だけ見れば間違いとは言えません。なぜなら、不服申立ては基本的に「処分」に対してするものであって、修正申告は納税者自身の申告だからです。国税庁のタックスアンサーでも、過大申告の是正は不服申立てではなく、更正の請求によると整理されています。

ただ、この説明は読み方を誤ると、「一度修正申告したら、その内容はもう争えない」と受け取られかねません。そこが少し気になるところです。

正確には、修正申告そのものに対して不服申立てはできません。しかし、その後に更正の請求をして、それに対して「更正すべき理由がない旨の通知処分」がされた場合、その通知処分は不服申立ての対象になります。これも国税庁自身が、不服申立ての対象として明示しています。

つまり、「修正申告したら一切争えない」のではなく、「いきなりその修正申告を審査請求で争う構造にはなっていない」というのが、より正確な整理です。

「争えない」のではなく「争い方が一段増える」

この論点は、制度の入口と出口が少しずれているため、誤解されやすいのだと思います。

更正処分まで行けば、その更正処分自体が処分なので、そこに対して不服申立てができます。これに対し、修正申告で終わらせると、まずは納税者自身の申告という形になります。そのため、後から争うには、更正の請求を出し、それが認められないという通知処分を受けて、そこを争う流れになります。

要するに、争う道が消えるのではなく、ワンクッション増えるわけです。この違いはかなり大きいです。心理的にも、手続的にも、修正申告のほうが「ひとまず終わった感」が出やすいからです。私は、このFAQの書きぶりは、制度を知っている人には通じても、一般納税者には少し不親切に映る余地があると感じます。

では、修正申告には応じないほうがよいのか

修正申告に応じること自体が不合理とは限りません。調査官の指摘に納得していて、争うつもりもなく、早く終わらせたいのであれば、修正申告で処理するのは自然です。FAQでも、申告納税制度の趣旨から、まず自ら是正することを勧める構造が示されています。

一方で、法令解釈や事実認定に争いがあるなら、「とりあえず出しておく」という判断は慎重であるべきです。あとで更正の請求をすればよい、というのは制度上はそのとおりですが、実際には一度出した修正申告を後からひっくり返すのは、それなりに手間も気力も要ります。

調査の最後まで国税当局と見解の相違がある論点は、「納得していないが、とりあえず修正申告」という処理は、後で尾を引きやすいです。その場で応じるかどうかは、税額の多寡より、争点の性質で見たほうがよいと考えます。

税務調査における「任意調査」とは

国税庁のFAQは、修正申告の勧奨は任意であり、応じなくても基本的に不利にならないと書いています。建前としてはそのとおりです。もっとも、税務調査の現場で、納税者がそれを本当に任意と感じられるかというと、そこは別問題です。

税務署の研修でも、「任意調査なのだからお断りします」という趣旨の問いに対しては、査察調査のような強制調査ではない、という意味で「任意」と呼ばれているのであって、調査を受けるかどうかまで納税者の自由に委ねられている、という意味ではない、といった説明をするよう教えられていた記憶があります。やや苦しい整理ではありますが、実務上はそのような理解で運用されている面があります。

修正申告は義務ではありません。応じるにしても応じないにしても、その後にどういう手続になるのかを理解したうえで判断することが重要です。

税務調査では、調査官の言い方よりも、手続の位置づけを正確に見るほうが大事です。修正申告の勧奨は任意です。そして、修正申告をした後でも、争う道が完全に閉ざされるわけではありません。ただし、争い方は少し回り道になります。その違いを知っているだけでも、調査終盤の見え方はかなり変わってくると思います。

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