国税庁には、文書回答制度というものがあります。具体的な取引について税務上の取扱いがはっきりしない場合に、納税者が事前に照会し、文書で回答をもらえる仕組みです。
申告納税制度のもとで、納税者の予測可能性を高めることを目的にしています。提出先は原則として納税地を所轄する税務署で、実際の審査と回答は各国税局の課税部審理課が担当します。回答は審理課長名で出されます。
ただし、回答してもらえる案件は限られています。法令解釈通達ですでに取扱いが明らかなものや、申告期限を過ぎたもの、税負担の軽減を主な目的とする取引などは対象外です。。
今回の照会の中身
令和7年2月7日付で東京国税局が公表した文書回答は、合同会社の業務執行社員に役員賞与を支給するときの取扱いを扱ったものです。
合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて
照会者は同族会社の合同会社で、業務執行社員に対して、毎月の役員給与とは別に、所定の時期に役員賞与を支給したいと考えていました。この賞与を「事前確定届出給与」(あらかじめ支給日と金額を税務署に届け出て、そのとおりに支払う役員給与)として損金(経費)の額に算入できるか、また届出書の期限をいつと考えればよいか、を尋ねたものです。
合同会社では、株式会社のような取締役の任期も、株主総会という法的な機関もありません。事前確定届出給与の制度は会社法に縛られる株式会社を前提に組み立てられているため、合同会社にあてはめるときに迷いが生じます。そこを正面から問うた照会といえます。
どんな手続を踏んだのか
照会者は、おおむね次のような段取りを定めていました。
一つ目に、定款で業務執行社員の任期を10年と定め、事業年度終了の日から3か月以内に定時社員総会を開催することを決めています。二つ目に、その定時社員総会で、総社員の同意により、役員給与と本件賞与の支給日・支給金額を決定します。三つ目に、その内容を記載した事前確定届出給与に関する届出書を、定時社員総会の開催日から1か月以内に提出します。
ポイントは、「定時社員総会」を株主総会に準ずるものとして位置づけ、その開催日を「職務の執行の開始の日」とみなした点です。
国税局の回答
東京国税局審理課長は、照会者の見解どおりで差し支えない、と回答しました。すなわち、本件賞与は事前確定届出給与に該当し、支給日の属する事業年度の損金に算入できる。届出書の期限は、定時社員総会の開催日から1か月を経過する日と解してよい。そういう内容です。
法人税法施行令第69条第3項第1号は、届出期限について「株主総会、社員総会その他これらに準ずるもの」の決議日を起点としています。合同会社の定時社員総会もここに含まれる、というのが今回の整理です。あわせて、同条第4項第1号の「株主総会等の決議」にも該当する、とされました。
実務でこれまで曖昧だったのは、合同会社の業務執行社員について「職務の執行の開始の日」がいつかという点でした。会社法上、合同会社の社員には取締役のような任期の定めがありません。任期も総会も法定されていない以上、起点が定まらないわけです。今回の回答は、定款に任期と定時社員総会を明記し、その開催日を起点とすることで、株式会社と同様の枠組みに乗せられることを示しました。
実務で押さえておきたいこと
回答を読んで感じたのは、合同会社で役員賞与を損金にしたいなら、定款の整備が事実上の前提になる、ということです。
回答が前提としているのは、定款で業務執行社員の任期を定め、定時社員総会の開催を定めていることです。定款にこれらの定めがない一般的な合同会社では、そのままではこの整理に乗りません。役員賞与を予定するなら、定款変更を先に済ませておく必要があります。
また、文書回答はあくまで照会で示された事実関係を前提とした回答です。事実関係が異なれば結論も変わり得ますし、不服申立ての対象にもなりません。回答に記載されているとおり、照会内容と異なる事実関係があれば、別の課税関係となることがあると明記されています。
合同会社は設立コストが安く、機関設計の自由度が高い会社形態です。その自由さゆえに、株式会社向けに作られた制度をそのまま使おうとすると、どこかで噛み合わない部分が出てきます。今回の文書回答は、その隙間を埋める一つの整理として、実務上参考になるものだと思います。

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