個人事業主の節税の話では、iDeCoと小規模企業共済がよく並んで出てきます。どちらも、掛けたお金を所得から差し引ける制度です。
ただ、似ているのは入口だけです。お金の置き方という点で、両者の性格はかなり違います。
掛けた年の節税額は同じ
iDeCoの掛金も小規模企業共済の掛金も、税金の計算では同じ枠に入ります。「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除です。掛けた金額の全額が所得から差し引かれます。
同じ金額を掛けるなら、その年に減る税金は同じです。節税額に差は出ません。
違うのは上限です。小規模企業共済は月7万円まで。iDeCoは自営業者の場合、現在は月6.8万円までで、2026年12月分の掛金から月7.5万円に上がります。iDeCoの上限は、国民年金基金などと合わせた額です。両方に同時に加入することもできます。
iDeCoは「自分で選ぶ」制度
iDeCoは、掛けたお金を何で運用するかを自分で決める制度です。選べる商品は、大きく2種類あります。
1つは投資信託です。株式や債券などに投資するため、受け取る額は増えることも減ることもあります。
もう1つは定期預金などで、「元本確保型」と呼ばれます。預けたお金そのものが目減りしにくい商品です。
ここで押さえておきたいのは、元本確保型を選ぶことも「選択」だという点です。iDeCoでは、どの商品にいくら配分するかを自分で指示します。指示しないままでいると、金融機関があらかじめ決めた商品で運用される仕組みもあります。
加えて、iDeCoには口座の管理手数料が毎月かかります。金利が低い時期に元本確保型だけで運用すると、利息より手数料のほうが大きくなることがあります。その場合、受け取る額は掛金の合計を下回ります。
小規模企業共済は「預けておく」制度
小規模企業共済では、加入者が運用商品を選ぶことはありません。掛金は運営する機関がまとめて運用します。受け取る額は、掛けた金額と期間、受け取る理由によって決まります。
加入者から見れば、お金を入れておくだけです。株価の上下を気にする必要はなく、投資をしているという感覚はほとんどないと思います。
ただし、損をしない仕組みではありません。加入から20年未満で自分の都合で解約すると、受け取る額が掛金の合計を下回ります。12か月未満なら何も戻りません。元本割れの原因が、iDeCoは運用の結果や手数料、共済は解約の時期にあるという違いです。
国民健康保険料は下がらない
この控除で下がるのは、所得税と住民税です。国民健康保険料は、多くの自治体で所得控除を引く前の所得をもとに計算されます。そのため、掛金を増やしても保険料は変わりません。個人事業税も同じです。
引き出せる時期と、受け取る時期
iDeCoは原則として60歳まで引き出せません。小規模企業共済は、元本割れを受け入れれば途中で解約でき、掛金の範囲内でお金を借りる制度もあります。事業資金に余裕がない時期は、この差が大きくなります。
出口では、どちらも一括で受け取ると多くの場合は退職所得になります。退職所得には「退職所得控除」という大きな非課税枠があります。ただ、両方を同じ年に受け取ると、この枠は1つ分しか使えません。受け取る年が近い場合も調整が入ることがあります。両方に加入するなら、受け取る時期の見通しも早めに立てておくほうが安全です。

