マイクロ法人にお金が貯まってきたら、どうやって個人に戻すか

法人税

マイクロ法人のよくある形は、個人事業の一部を法人に移し、役員報酬を低く抑えるものです。会社員と同じ社会保険に入りつつ、保険料を小さくするというのが基本の発想です。

この形は、法人の売上がそれほど大きくないことを前提にしています。切り出した事業が思ったより伸びるとこの前提が崩れます。役員報酬は低いままなので、利益は法人税を払ったあと会社に貯まっていきます。

会社のお金は、社長個人のお金ではありません。個人に移すには、何らかの形を選ぶ必要があります。形ごとに、税金と社会保険の扱いが違います。

毎年の給与として受け取る

いちばんシンプルなのは、役員報酬を上げることです。ただし社会保険料も上がります。マイクロ法人を作った理由の一部を自分で手放すことになります。個人事業の所得と合算して所得税がかかるため、税率が上がる点にも注意が必要です。

厚生年金の保険料には上限があり、現在は月の報酬の基準額65万円で頭打ちです。この上限は2027年9月から段階的に引き上げられます。保険料を払った分は将来の年金に反映されるので、単なる負担増と見るかは人によります。

役員報酬は、原則として期首から3か月以内にしか金額を変えられません。期の途中で上げても、上げた分は原則として定期同額給与に該当しないものと認められ、法人の損金の額に算入されません。

もう一つは、事前確定届出給与です。「この日にこの金額を払う」と、あらかじめ税務署に届け出ておく役員賞与のことです。届け出どおりに払えば、法人の経費になります。届出には期限があり、多くの場合は期首から4か月以内が目安です。金額や日付が届出と違えば、一般に全額が損金の額に算入されません。賞与にも社会保険料はかかりますが、月給とは別の計算で、別の上限があります。

給与以外の形で受け取る

配当は、法人税を払ったあとの利益から出します。法人の経費にならず、受け取った個人にも所得税がかかります。同じ利益に二度課税される形なので、多くの場合は不利です。

一方で、配当には社会保険料がかかりません。配当控除という税額を差し引く仕組みもあり、個人の所得が低めなら負担がそれほど重くならない場合もあります。

退職金は、税金の面で優遇されています。勤続年数に応じた控除があり、残りの半分だけに課税されるのが原則です。社会保険料もかかりません。

ただし、注意点が二つあります。一つは、役員としての期間が5年以下だと、半分にする扱いがなくなることです。設立から日が浅い法人では、ここが問題になります。もう一つは、実際に退職している必要があることです。社長一人の法人で、辞めたあとも実質的に経営を続けていれば、退職金と認められないおそれがあります。金額が高すぎる場合も、その部分は法人の損金の額にはなりません。

会社ごと手放す・閉じる

株式を売る方法もあります。売却益は給与などとは分けて、一定の税率で課税されます。ただ、マイクロ法人は社長個人の働きに頼っていることが多く、買い手が見つかる場面は限られると思います。

会社を閉じるときは、残った財産を株主に分配します。出資した額を超える部分は、配当とみなされて課税されます。退職金とあわせて、最後にまとめて受け取る形です。

給与の形をとらない受け取り方

ほかにも、法人のお金を個人の生活に回す方法があります。

法人が借りた住宅を社宅にして、家賃の一部を個人が払う方法です。一定の基準以上の家賃を払っていれば、差額は給与として課税されないのが一般的です。出張旅費の規程を作り、日当を支払う方法もあります。金額が常識の範囲なら、受け取った側で課税されません。自宅の一部を事務所として法人に貸し、家賃を受け取る方法もあります。家族が実際に法人の仕事をしているなら、その家族に給与を払うことも考えられます。

いずれも、実態があることが前提です。形だけ整えたものは、税務調査で否認されやすい部分です。

法人の売上が個人事業を上回るなら、受け取り方を工夫するより、事業全体を法人に寄せるほうが筋がよい場合もあると感じます。個人事業+マイクロ法人という形そのものも、数年ごとに見直す必要があるのかもしれません。

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