源泉徴収票の提出が変わります――令和8年分から市区町村経由のみなし提出が開始

所得税

令和8年4月、国税庁から「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」が公表されました。

実務に直結する論点が16問にわたって整理されています。中でも問1で示された「みなし提出の特例」は、源泉徴収票の提出ルートそのものを変える内容です。今回はこの特例を中心に、何が変わるのかを確認していきます。

何が変わるのか

これまで給与支払者は、源泉徴収票を税務署に、給与支払報告書を市区町村に、それぞれ提出する必要がありました。同じ従業員について、ほぼ同じ内容の書類を二か所に出す形でした。

令和5年度税制改正で、この流れが見直されました。令和9年1月1日以後に提出すべき源泉徴収票、つまり令和8年分以後の源泉徴収票については、市区町村に支払報告書を提出すれば、税務署にも源泉徴収票を提出したものとみなされます。これが今回の「みなし提出の特例」です。

提出した支払報告書の内容は、市区町村側で入力等が行われたあと、税務署にデータ連携されます。提出先は市区町村ひとつに集約され、そこから税務署へ流れていく構図です。

提出義務がなくなったわけではない

ここは誤解しやすいところだと感じました。源泉徴収票の税務署への提出義務そのものがなくなったわけではありません。あくまで「市区町村に支払報告書を出せば、税務署にも出したものとみなす」という建付けです。

そのため、Q&Aの問15では、税務署から記載内容の確認のために連絡が来る場合があると明記されています。提出ルートが市区町村経由に変わっても、税務署が中身を見ているという点は変わりません。

逆方向のみなしは効かない点も注意が必要です。問6では、源泉徴収票を税務署に提出しても、市区町村に支払報告書を提出したものとはみなされないとされています。市区町村への支払報告書は、別途出す必要があります。

受給者への交付は従来どおり

提出ルートが変わっても、従業員本人への源泉徴収票の交付は引き続き必要です(問3)。

ここは普段の実務で混同されやすいところかもしれません。「税務署に出さなくていい」という話が独り歩きすると、本人交付まで省略してよいと受け取られかねません。本人交付は所得税法上の別の義務であり、特例の対象外です。書面に代えて電磁的方法による交付ができる点も、改正前と変わりません。

提出範囲も揃えられました

特例の創設と併せて、源泉徴収票の提出範囲も改正されています(問7)。

改正前は、源泉徴収票と支払報告書で提出範囲が異なっていました。たとえば年末調整済の一般従業員の給与所得の源泉徴収票は、支払金額500万円超のものだけが税務署提出の対象でした。一方、支払報告書のほうは、年の中途で退職した者で支払金額30万円以下のものを除き、すべての給与等が対象です。

改正後は、源泉徴収票の提出範囲が支払報告書の提出範囲に揃えられました(年の途中で死亡した者の公的年金等の源泉徴収票を除く)。範囲が同じだからこそ、市区町村への提出をもって税務署提出とみなす仕組みが成り立つわけです。提出範囲の統一とみなし提出は、ワンセットで理解する必要があります。

電子的提出義務の判定には注意が必要です

実務上、見落としやすいのが法定調書の電子的提出義務の判定方法です(問9)。

電子的提出義務は、基準年(提出期限の属する年の前々年)に提出すべきであった源泉徴収票の枚数が30枚以上かどうかで判定します。ここで使う枚数は、改正前の提出範囲で数えた枚数です。

たとえば、年末調整済で支払金額600万円の給与支払報告書を50枚、市区町村に提出して源泉徴収票がみなし提出となったケースでは、改正前の提出範囲(500万円超)に当てはまるため、基準年に提出すべき源泉徴収票は50枚と数えます。30枚以上なので電子的提出義務があります。

一方、支払金額40万円の乙欄適用者15枚は、改正前の提出範囲では税務署提出の対象外(乙欄適用者は50万円超が対象)でした。この15枚は基準年の枚数にカウントされません。

「実際に税務署に紙で出した源泉徴収票は0枚だから義務はない」と判断すると、誤ります。みなし提出になっているものも含めて、改正前の範囲で数え直す。ここは一度、自社の状況で確認しておきたい論点です。

合計表と訂正の取扱い

合計表については、給与所得の源泉徴収票だけを税務署に提出している場合は、みなし提出に伴って提出不要になります(問8)。ただし合計表は6種類の法定調書の兼用様式なので、退職所得の源泉徴収票など他の法定調書のいずれかを税務署に提出するときは、引き続き合計表の提出が必要です。

訂正については、令和7年分までは従来どおり源泉徴収票と支払報告書をそれぞれ訂正します(問11)。令和8年分以後で支払報告書に誤りがあった場合は、市区町村に訂正分の支払報告書を提出すれば、税務署にも訂正分の源泉徴収票を提出したものとみなされます(問12)。税務署への別途提出は不要です。

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