買う節税より、買わない節税

税金全般

節税の話題になると、必ずと言っていいほど出てくるのが、高級車や高級腕時計を法人や個人事業の資産として購入する手法です。

確かに、プライベートで購入すれば一円も経費になりませんが、事業の資産として購入すれば、減価償却の手続きを通じて耐用年数にわたって費用化することができます。金額によっては一括で費用計上できる場合もあります。

ここまでは、間違いではありません。ただ、これを「節税」と呼ぶことには、個人的には少し違和感があります。

出口まで考えたときの話

物事は出口が大事だと思っています。

高級車にしても腕時計にしても、購入した時点で貸借対照表に資産として計上されます。資産として計上されたものは、減価償却を通じて少しずつ費用に変わっていくわけですが、購入代価の分だけ会社のキャッシュは減ります。

そして、いずれ売却したり廃棄したりする日が来ます。売却時に簿価より高く売れれば、その差額は利益として課税されます。耐用年数を通じて費用化した金額分、結局どこかで取り戻されているとも言えます。結局のところ、税務上の貸借対照表にブックされるということは、出口まで考えると課税の繰り延べに過ぎないということになります。

何より、何かを買うということは、その値段分だけ事業の手元資金が減るということです。仮に300万円のものを買って、300万円分を費用にできたとしても、減った税金はせいぜいその3〜4割程度。差し引きで考えると、手元のキャッシュは大きく減っています。

それは本当に「節税」と呼べるのか

私が節税という言葉で思い浮かべるのは、もう少し違うものです。

例えば、事業をやっていなくても不可避的に生じる支出を、事業経費に適切に寄せること。例えば、自宅の一部を事務所として使っているのであれば、家賃や光熱費の一部を家事按分(プライベート分と事業分を合理的に分けること)で経費にしていく。これは、買わなくても出ていくお金の一部を、事業の費用として整理する作業です。

一方、本来事業に必要のないものを買って経費にする行為は、出ていかなくてよかったお金を出している、という側面があります。経費にはなりますが、キャッシュは確実に減ります。

真に必要なものだけを買うという選択肢

別の見方をしてみます。

真に必要なものだけを買って、それ以外のキャッシュは手元に残しておく。費用にならない分、納税額は多くなります。ただ、買わなかった分のキャッシュは事業の中に残っています。増えた(減らなかった)税負担は、そこから払っていけます。

「事業を大きくしたいなら、多く納税しなさい」とよく言われます。これは経営者の精神論でもなく、また、税務当局のポジショントークでもなく、こういうところから来ているのではないかと思っています。利益が出ているということは、それだけキャッシュが手元に残っているということ。そのキャッシュを、税負担を理由に不要なものに変えてしまえば、事業を大きくする原資は減ります。

それでも高級車を買う理由があるなら

もちろん、真に事業に必要であれば、買うべきです。営業上どうしても必要な車であったり、お客様との関係上必要な装いであったり、事業に直結する理由があるなら、それは合理的な投資判断です。

ただ、「節税になるから買う」という順番は逆なのではと感じます。買いたいものがあって、それが事業に必要で、結果として経費になる。この順番なら納得できます。経費にできるから買う、という発想で動くと、出口で困ることが多いように思います。

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