学生マンション会社の消費税9億円申告漏れ――非課税の家賃に対応する仕入れと、外注か内製かという論点

消費税

学生向けマンション「ユニライフ」などを運営するジェイ・エス・ビー(京都市)が、大阪国税局から2024年10月期までの4年間で消費税計約9億円の申告漏れを指摘された、というニュースを目にしました。

消費税9億円の申告漏れ 学生マンション運営会社 大阪国税局(時事通信) – Yahoo!ニュース
学生向け賃貸マンションなどを全国で運営する東証プライム上場の不動産会社「ジェイ・エス・ビー」(京都市)が、2024年10月期までの4年間で消費税計約9億円の申告漏れを大阪国税局から指摘されていたこ

建物のメンテナンスや入居者の募集業務などを子会社に委託し、その経費にかかった消費税を控除して申告していたものの、本来は控除できない分まで含まれていた、と伝えられています。意図的な所得隠しではないと判断され、重加算税は課されていないようです。

個別の事案の当否はわかりませんので、ここでは「なぜ控除できないのか」という仕組みの部分だけを整理してみます。

なぜ控除できないのか

消費税には、売上で預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて納める仕組みがあります。これを仕入税額控除といいます。

ただし、差し引けるのは、原則として「課税される売上」を生み出すために使った経費の消費税です。

居住用不動産の家賃は、消費税法上、非課税とされています。家賃を受け取るときに消費税を預かっていない以上、その家賃を生み出すための経費にかかった消費税も、原則として差し引けません。差し引けてしまうと、預かっていない消費税の還付を受ける形になり、消費税の転嫁という観点から辻褄が合わなくなる等と一般には説明されています。

経費に係る消費税を「課税売上に対応するもの」「非課税売上に対応するもの」「両方に共通するもの」に分け、非課税売上にだけ対応する分は差し引かない。これが個別対応方式という考え方です。居住用マンションの賃貸管理にかかる経費は、この「非課税売上に対応する分」にあたります。

数字で考える ― 子会社に外注した場合

ここからは、ひとつ気になったことを数字で確かめてみます。委託する業務の中身が、人件費80・外部への支払い20だったとします(税率は10%とします)。

子会社はこれを業務委託料100として親会社に請求し、消費税10を上乗せします。親会社は110を支払います。親会社の売上は非課税の家賃ですから、この消費税10は非課税売上に対応する課税仕入れにあたり、差し引けません。親会社は10をそのまま負担します。

もし内製化していたら

同じ仕事を、親会社が自社の従業員にやらせた場合を考えます。

人件費80に消費税はかかりません。給与は消費税の対象外だからです。外部への支払い20には消費税2がかかりますが、これは外注しても自社でやっても非課税売上に対応するため、どちらにせよ差し引けません。結果、自社でやれば負担は2で済みます。

外注した場合の負担10との差は8です。これは人件費80にかかる消費税分(80×10%)にちょうど一致します。

理由はこうです。給与そのものに消費税はかかりません。ところが、その人手による作業を子会社から「業務委託」として買うと、人件費に相当する部分まで含めて消費税のかかる取引に変わります。親会社がその消費税を差し引けないなら、本来かからなかったはずの人件費部分の消費税を、グループ全体で負担することになります。

外注が有利になる場面はあるのか

書きながら、ひとつ反対側も気になりました。子会社なら全額差し引けていた外部経費の消費税が、内製にすると差し引けなくなるのではないか、という点です。

ただ、今回の例のように経費が居住用の賃貸管理に直接対応する場合、外部経費の消費税はどちらの形でも差し引けません。外注しても、その分は業務委託料に乗って親会社に回り、結局は親会社が負担します。ですから、この点は内製化を不利にする要因にはなりにくいと考えています。

差が出るとすれば、外部経費が課税売上と非課税売上の両方に関わる「共通対応」の場合です。このときは、子会社(課税売上が中心)と親会社(非課税売上が中心)とで、差し引ける割合が変わり得ます。もっとも、業務の大半が人件費であれば外部経費そのものが小さく、この影響は限定的です。

なお、ここまでの話は、親会社がその委託費の消費税を差し引けない場合、つまり売上が非課税売上中心であることが前提です。売上が課税中心で消費税を全額差し引ける会社なら、外注でも内製でも消費税負担はあまり変わりません。

そう考えると、人件費比率が高い業務に限れば、内製化が消費税の面で不利になる可能性は低そうです。もっとも、子会社を使うかどうかは、責任分担や人事など税以外の事情も絡みます。消費税だけで決まる話ではありません。

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