食料品の消費税1%で、簡易課税の有利不利はどう動くか

消費税

報道によると、政府・与党は食料品の消費税を2027年4月から2年間、1%に引き下げる方針を固めたとされています。高市首相が30日にも、自民党に法改正へ向けた党内手続きを指示する方向とのことです。1%分にあたる年間約6千億円を中低所得者への給付に回し、「実質ゼロ」とする案が土台になっています。

食料品の消費税1%、政府・与党方針固める 30日にも高市首相指示(朝日新聞) – Yahoo!ニュース
食料品の2年限定の消費減税について、政府・与党は来年4月から1%に引き下げる方針を固めた。高市早苗首相(自民党総裁)が30日にも、自民党に法改正に向けた党内手続きを指示する方向で調整している。複数

まだ方針の段階で、法律として決まったわけではありません。取り上げるべきか迷いましたが、ここまで来ると2027年4月からの1%はほぼ動かないように見えます。

以下は政策の是非ではなく、消費税の申告実務にどう効いてくるかという話です。思考実験に近い内容として読んでいただければと思います。

外食は10%のまま、仕入れだけ1%になる

現在の軽減税率と同じ考え方が続くのであれば、店内で提供する外食は対象外です。売上は10%のままで、食材の仕入れだけが1%になります。

原則課税では、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納税額を出します。仕入れの税率が8%から1%に下がると、差し引ける金額が大きく減ります。売上側が変わらないのですから、納税額は増えます。

簡易課税は違います。売上の消費税額に業種ごとの割合を掛けて計算するため、仕入れの税率がいくらであっても納税額は変わりません。飲食店業は第4種で、みなし仕入率は60%です。

つまり飲食料品の仕入れが多い飲食店では、簡易課税が有利になる場面が増えると考えられます。ただしテイクアウトの割合が大きい店は売上側も1%に下がりますので、そこは分けて考える必要があります。

法人は期首より前に決める必要がある

ここで効いてくるのが届出です。簡易課税を選ぶには、原則としてその課税期間が始まる前までに届出書を出しておかなければなりません。決算を迎えてから振り返って選ぶことはできませんし、原則として2年間は続けて適用することになります。

法人の飲食店であれば、原則課税と簡易課税のどちらが有利かを、来期が始まる前に試算しておく必要があります。仕入れの税率が変わる前提での試算です。例年どおりの感覚で判断すると、読み違える可能性があります。

個人事業主は原則か3割特例かに絞られる

個人事業主には別の事情があります。2割特例が使えるのは令和8年分までで、令和9年分と令和10年分は3割特例に切り替わります。

「2割特例」終了後どうする?3割特例の要点整理
インボイスの2割特例は2026年分で終了。2027年分からは個人事業主限定の3割特例が始まります。届出の要否や簡易課税との比較など、今確認すべきポイントを元国税職員の税理士が解説します。

売上の消費税額の3割を納める計算です。対象は、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった方に限られます。

3割特例は事前の届出が要りません。申告書に適用する旨を書けば足ります。年数の縛り等もありません。

そして3割特例は、売上の消費税額の7割を差し引ける扱いですから、みなし仕入率70%とおおむね同じことになります。第4種の飲食店業や第5種のサービス業であれば、簡易課税より3割特例のほうが有利になる場合が多いはずです。

そうなると、多くの個人事業主が考えるべきなのは、原則課税か3割特例かという比較に絞られます。どちらも事前の手続きが要りませんので、決算を迎えてから両方で計算してみて、有利なほうを選べばよいことになります。

食料品の卸売は判断が難しい

飲食料品の卸売は、売上も仕入れも1%になります。

簡易課税では第1種で、みなし仕入率は90%です。売上の消費税額の1割を納めます。売上の税率が下がれば、その1割も自動的に小さくなります。

問題は仕入れ以外のコストです。販売手数料や発送代行の費用は10%のままです。ここが大きい事業者では、原則課税で差し引ける金額が相対的に効いてきます。売上の税率が1%になる分、原則課税のほうが有利になることも起こりそうです。

このあたりは事業者ごとに構造が違いますので、一律にどちらとは言えません。飲食店や食料品の卸売に該当する方は、来期の試算を一度やっておいたほうがよさそうです。

タイトルとURLをコピーしました