出産費用と医療費控除 ── 我が家の場合と、民間の医療保険の要否

出産育児

国税庁のタックスアンサーNo.1124に、出産にかかる費用の取扱いがまとまっています。妊娠と診断された後の定期検診や検査の費用、通院にかかった交通費は対象です。出産で入院するとき、電車やバスでは難しくてタクシーを使ったなら、そのタクシー代も対象になります。反対に、入院に際して買った寝巻きや洗面具は対象外です。病院に支払う入院中の食事代は入院費用の一部として一般に対象になりますが、出前や外食は含まれません。実家で産むために帰省する交通費も対象外です。

不妊治療や人工授精の費用も、国税庁の質疑応答事例で対象とされています。無痛分娩の麻酔費用も、分娩のために直接必要な費用として対象になると考えられます。

ただし、補填される分は差し引きます。出産育児一時金は差し引かなければなりません。自治体の助成金も、医療費そのものを補う性格のものであれば同じです。一方、出産手当金は出産前後に働けないことに対する所得の補填なので、差し引く必要はありません。傷病手当金も同じ考え方です。

妊娠中の負担は、補助券のおかげで小さかった

我が家は2026年3月に子どもが生まれました。2025年中に出産関係で払ったのは妊婦健診の費用くらいで、私と妻のそれ以外の医療費と合算しても10万円に届きませんでした。2025年分は医療費控除を使っていません。

母子健康手帳を受け取ると、妊婦健康診査の受診票、いわゆる補助券が交付されます。これを使うと窓口での負担はかなり小さくなります。妊娠終期は健診の間隔が短くなるため補助券が足りなくなることもあるようですが、我が家は足りました。そのおかげで妊娠中の出費はあまり膨らまなかったように思います。なお、補助券で賄われた部分はそもそも自分で払っていないので、控除の対象にはなりません。

出産の月に、まとまった金額が出た

出産の月に出費がかさみました。無痛分娩を選んだこともあり、出産育児一時金50万円を差し引いた後の自己負担が30万円ほどです。さらに東京都の無痛分娩費用助成が使えます。令和7年10月に始まった制度で、対象医療機関で無痛分娩を受けた都内在住者に、上限10万円が助成されます。これを引くと20万円ほど。ここに2026年中に払った妊婦健診の費用が乗るので、2026年分は医療費控除の対象になる見込みです。

差引きには細かいルールがあります。補填金は、その給付の目的となった医療費からだけ差し引きます。引ききれない金額が出ても、他の医療費から引く必要はありません。また、申告書を出す時点で助成金の額が確定していない場合は、見込額で差し引いておき、後で確定額と違えば修正申告や更正の請求で直します。

帝王切開や切迫早産になったとき

帝王切開や切迫早産は、正常分娩と違って健康保険が使えます。原則3割負担で、高額療養費制度によって1か月の自己負担にも上限がかかります。会社員であれば傷病手当金の対象にもなります。一般に、通常の出産費用に10万円ほどを上乗せして見ておけば、当座の資金としては足りることが多いと思われます。

出産のために医療保険に入る必要はあるか

ここからは私見です。私は、出産に備えて民間の医療保険に入る必要はないと考えています。

理由は二つあります。一つは、これまで書いてきたとおり公的な保障が厚いこと。もう一つは、そもそも保険の役割から外れると思うことです。保険は、起きる確率は低いけれども、当たってしまうと家計が立ち行かなくなる損失に備えるものです。逆に言えば、貯蓄で吸収できる程度の出費に保険を使うのは、役割が違います。

帝王切開になって給付金を受け取り、払った保険料より多く戻ってきたという話はよく聞きます。ただ、それは結果としてそうなったというだけで、損得で入るなら保険ではなく賭けに近くなります。出産の費用は、公的な制度と数十万円の蓄えでおおむね対応できる範囲です。人生が破綻する種類のリスクではありません。だから不要だ、というのが私の結論です。

もっとも、蓄えが薄い時期に妊娠がわかった、といった事情があれば話は変わります。判断の軸は「損か得か」ではなく「これが起きたら家計が持たないか」に置くのがよいと思っています。

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