2026年6月、米国の高配当株ETFであるHDV(iシェアーズ・コア 米国高配当株ETF)の分配の頻度が、四半期(年4回)から毎月(年12回)へ変更されました。証券会社からお知らせが届いた方もいらっしゃると思います。
変わったのは、分配の回数だけです。保有している銘柄も、連動する指数も、分配の元になるお金も、これまでと同じですので、年4回配当していたものを、12回に小分けにしたという話です。
「毎月分配型はダメ」と言われてきた理由
毎月分配型の投資信託は、長いあいだあまり評判のよくない商品でした。理由は主に二つです。
一つ目は、コストの高さです。購入時の手数料も、保有中に差し引かれる報酬も高い商品が多くありました。そのコストのせいでトータルリターンが削られます。値上がり益と分配金を合わせた最終的な成績が、コスト分だけ確実に目減りします。
二つ目が、いわゆるタコ足配当です。運用で得た利益ではなく、預かった元本を取り崩して分配金として返す。日本の投資信託では、この部分は元本払戻金(特別分配金)として区分され、税金はかかりません。利益ではなく、自分のお金が戻ってきているだけだから当然です。手数料だけは引かれます。
つまり嫌われていたのは、毎月分配という配当の仕方そのものではなく、その裏にある高コストの実態及び中身の空洞化です。
HDVはその二つに当てはまるか
順に見ていきます。経費率は年0.08%です。コストの問題は当てはまりません。そしてコストが低ければ、トータルリターンが削られる度合いも小さくなります。
残るのはタコ足配当です。ここが本題になります。HDVが配っているのは、保有している米国企業から受け取った配当金から、経費を引いた残りです。あらかじめ「年◯%を配ります」という水準を掲げていません。企業からの配当が減れば、分配金も減ります。約束した利回りを守るために元本を取り崩す、という動きが起きにくい作りです。
ただし、これは「ETFだから安全」という話ではありません。ここは分けて考える必要があります。
米国のETFには、株式のオプション取引を使って高い分配金を出すタイプのものがあります。そうした商品では、支払われた分配金の一部が「元本の払い戻し」として扱われることが珍しくありません。運用で得た利益が約束した分配額に届かず、預かったお金から穴埋めしているということです。日本の投資信託でいう特別分配金と実態はよく似ています。
ETFという形が、元本の取り崩しを防いでいるわけではないのです。HDVの分配金が信用できるのは、上場しているからではありません。原資が企業の配当であり、無理な利回りを約束していないからです。同じETFという名前でも、中身は相当に違います。
中身は同じなのにNISAの対象から外れる
一方で、日本の投資家にとっては実務上の影響があります。新NISAの成長投資枠では、毎月分配型のファンドは制度上、対象から外れる決まりになっています。そのためHDVは、中身が何も変わっていないのに、成長投資枠の対象外となりました。証券会社は6月中旬以降、順次除外の対応を取っています。
すでにNISA口座で保有している分は、そのまま非課税で持ち続けられる扱いが一般的です。慌てて売る必要はありません。ただし積立設定をしていた場合、その買付は止まります。設定の見直しは必要です。
この報道を見て、中身は何も変わっていないのそこまでやるんだという感想を持ちました。恐らく、制度は商品の良し悪しを一つずつ判定しないので、回数という外形的に見て明らかな基準で外していく運用が確実という理屈は理解できます。
これから買う人が考えること
成長投資枠で米国の高配当株ETFを持ちたいのであれば、VYMなど四半期分配の商品が残っています。
保有中の分については、非課税のまま持ち続けるか、枠の使い勝手を優先して他へ移すかの判断になります。売却しても、その簿価分の非課税枠が使えるようになるのは翌年です。この点だけは急がないほうがいいと思います。
今回の件で確認しておきたいのは、毎月分配という形式そのものは、良し悪しを決める材料にならないということです。見るべきは、その分配金が普通分配金(利益の配当)か、特別分配金(元本の払戻)か、ということです。
