家を持つか、借りるか。その名義を個人にするか、法人にするか。この二つを掛け合わせると四つのパターンになります。ここでは税金の損得だけに絞って、それぞれの特徴を並べてみます。
マイホーム×個人
自宅を個人名義で所有する場合、税制上の優遇が手厚く用意されています。持ち家の取得を国が後押ししてきた経緯があるためです。
代表的なものが住宅ローン控除です。年末のローン残高の0.7%が所得税などから差し引かれます。控除期間は新築で最長13年、中古では10年が原則です。近年は省エネ性能を満たすことが要件に組み込まれ、借入限度額も住宅の性能や世帯の状況によって変わります。
売るときの優遇も大きく、自宅を売って出た利益は3,000万円まで課税されません。それでも利益が残る場合、所有期間が10年を超えていれば、6,000万円以下の部分の税率が20.315%から14.21%に下がります。
相続の場面では小規模宅地等の特例があります。一定の条件を満たせば、自宅の敷地330平方メートルまでの相続税評価額を80%減額できます。土地の値段が高い地域ほど、効き方は大きくなります。
マイホーム×法人
法人名義にすると、いま挙げた優遇はいずれも使えません。住宅ローン控除も3,000万円の控除も、個人が自分の住まいとして持っていることが前提だからです。
代わりに出てくるのが経費です。建物の取得費は、減価償却として毎年少しずつ費用になります。ただし住宅用の耐用年数は木造で22年、鉄筋コンクリート造で47年と長く、思ったほど早くは落ちません。中古で買えば、この年数は短くできます。リフォーム費用や管理費も、内容によりますが会社の費用として処理できます。
売ったときの扱いも変わります。個人では自宅の売却益を他の所得と切り離して計算しますが、法人では本業の損益と合算されます。売却益が出た年に本業が赤字なら相殺できますし、その逆も起こります。
自分が住む場合は、会社が所有して役員に貸す、役員社宅の形をとります。役員から受け取る家賃が低すぎると、その差額が給与として課税されます。ここは計算式が決まっているので、外すと話が崩れます。
賃貸×個人と賃貸×法人
賃貸で、かつ事業を営んでいる場合は、家賃の一部を経費にできます。
個人事業主なら、自宅のうち仕事に使っている部分を按分します。根拠になるのは床面積や使用時間で、実態に沿った説明ができることが前提です。
法人の役員社宅なら、会社が借りて役員に貸す形になります。会社が受け取るべき家賃は計算式で決まっており、床面積が一定以下の住宅であれば、役員の負担は家賃の一割から二割程度に収まることが多いです。結果として、残りを会社の費用に置ける計算になります。
事業をしていない個人が借りる場合、税制上の手当てはほとんどありません。家賃は経費になりませんし、相続の場面で有利になる仕組みもありません。節税という一点だけで見れば、四つのうち最も分が悪いといえます。
法人は出口戦略まで
法人所有には、個人には出てこない問題があります。出口です。
将来その家を個人名義に戻すなら、法人から個人への売却として、そのときの時価で課税されます。会社をたたむときも同じ論点が出てきます。買うときに得られる経費は毎年の数字として見えますが、手放すときの負担は先の話なので見えにくいです。
賃貸を個人で借りる形も、税金の表の上では最下位です。ただし住み替えの自由さや、修繕費を負わないことは、その表には出てきません。四つのパターンは、優遇の大きさで並ぶというより、何を手放してよいかで並ぶのだと思います。
