職員に税務判断をさせてよいのか―ひとり税理士でも他人事ではない監督義務の話

税理士独立

日本税理士会連合会が公表している「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」に、事務所職員の業務範囲を扱った箇所があります。

そこでは、資格のない職員が税理士業務を行うことはできないとされています。税理士業務とは、税務代理、税務書類の作成、税務相談の三つです。税理士試験に合格していても、登録をしていなければ同じ扱いになります。

では職員は何をするのか。指針は、使用者である税理士の管理監督の下で、税理士業務に関する個別具体的な判断を伴わない事務作業に従事する、と書いています。これがいわゆる税理士補助業務です。これに加えて、財務書類の作成や記帳代行といった付随業務にも従事できます。

読み流しそうになりますが、「個別具体的な判断を伴わない」という限定が入っています。判断すること自体が、職員の仕事として想定されていません。

監督義務は「させてよい」根拠ではない

税理士法には、使用人等に対する監督義務の規定があります。税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう、使用人その他の従業者を監督しなければならない、という内容です。

この条文を、監督さえしていれば職員に税理士業務をさせてよい、という許可の規定として読んでしまうことがあります。SNSで観測した税理士で弁護士でもある方の見解として聞いたのは、そうではない、というものでした。監督義務の中身は、職員に税理士業務へ手を出させないようにすることだ、という読み方です。

この整理には説得力があると感じました。無資格者が税理士業務を行うことは、そもそも法律で禁止されています。禁止されている行為が、監督を付けたことで解禁されるという構造は、確かに考えにくいところです。

指針も、職員が税理士業務を行った場合には、その職員は税理士業務の制限の規定に違反し、監督する側の税理士も監督義務違反または名義貸しの禁止に違反する可能性がある、と書いています。職員だけの問題では終わらない書き方になっています。

判断と作業の順番が入れ替わっている

条文どおりに並べれば、認められる流れは一つのはずです。税理士が税務上の判断をし、職員がその判断に沿って手を動かし、最後に税理士が内容を確認する。この順番です。

ところが、職員が判断をして書類まで仕上げ、税理士が最後に確認する、という流れも珍しくないように見えます。最終確認を税理士がしているのだから問題ない、という理解です。

日税連が令和六年に公表した事例集にも、無資格者が作成したものでも税理士が検算などをして確認すれば署名して差し支えない、と誤認しているケースが見受けられるという記述があります。同じ資料は、適切な監督の下で職員が下書きしたものを税理士が確認して署名することとは意味が異なるとも書いています。

線引きは、書類を誰が物理的に作ったかではなく、判断を誰がしたかにあるということです。ここが逆になっていると、確認をどれだけ丁寧にやっても、順番が戻ることはありません。

ひとり事務所でも他人事ではない

職員を雇っていなければ、この話は関係ないように見えます。ただ、ひとりで完結しない場面は意外にあります。記帳を外部に委託する、繁忙期だけ手伝ってもらう、家族に事務作業を頼む。どれも、判断と作業の境目が曖昧になりやすい場面です。

もう一つは、規模を変える瞬間です。人を雇うと決めてから線引きを考え始めるのでは、おそらく遅いのだと思います。仕事の切り分け方は、ひとりで回している間に固まっていくからです。判断は自分がして、作業だけを渡す。この形を先に作っておけば、雇う段になって渡し方を組み直さずに済みます。

逆に、判断ごと渡すことを前提に業務の流れを作ってしまうと、後から戻すのは簡単ではありません。誰かに手伝ってもらう前に、自分の仕事のどこまでが判断で、どこからが作業なのかを一度書き出してみる。それだけでも、線の位置はかなり見えてくるはずです。

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