食料品1%で農家に還付――政府が税理士費用まで支援する理由

消費税

今日の日本経済新聞に、政府が小規模な農家などを対象に税理士費用を支援する方針だという記事が出ていました。9月2日の自民党税制調査会の会合で示されたものです。食料品の消費税率引き下げに伴い、本則課税へ移る事業者の負担を軽くする狙いとされています。

売るときは1%、買うときは10%

食料品の消費税率を2027年4月1日から2年間、現在の8%から1%へ引き下げる基本方針が、2026年8月5日に閣議決定されました。ただし関連法案はまだ成立しておらず、対象品目の線引きや税率切り替え前後の取扱いも確定していません。

農家の側から見ると、出荷する農産物は食料品ですから、受け取る消費税は8%から1%に下がります。一方で、肥料や農薬、燃料、資材などは食料品ではありません。仕入れの際に払う消費税は10%のままです。

受け取る額だけが減り、払う額は変わらないというのが今回の話の出発点です。

差額を取り戻せるのは本則課税だけ

本則課税、つまり原則的な計算方法では、受け取った消費税から実際に払った消費税を差し引いて納税額を出します。引き算の結果がマイナスになれば還付です。売上に対する税率が1%、仕入れに対する税率が10%であれば、還付になる農家は相当数出てくると考えられます。

ところが簡易課税は違います。実際にいくら払ったかを見ず、売上に一定の割合を掛けて仕入分を計算する方法です。構造上、納税額がマイナスになりません。免税事業者にいたっては申告そのものをしませんから、当然還付もありません。日経の記事では、免税・簡易課税に該当する事業者は国内に約80万人いるとされています。

つまり、減税の局面では、簡易課税と免税が不利に働きます。普段は事務負担を軽くしてくれる仕組みが、逆に作用してしまいます。

支援の対象が「税理士費用」であること

本則課税に移れば、帳簿の付け方も申告書の作り方も変わります。請求書の保存、税率ごとの区分。一人で農業をやりながら自力でこなすには、それなりの負担です。だから相談対応と税理士費用を支援する、という組み立てになっています。

実務の側から見ると、この種の支援は「制度の案内」と「申請の手伝い」がセットになりがちです。給付や補助の形をとる以上、申請書の提出が必要になるはずで、そこまで含めて面倒を見ないと現場は動きません。関与先に農林漁業者がいる事務所は、支援策の詳細が固まった段階で早めに拾っておいたほうがよさそうです。

誘導に見える面はある

還付を受けられるのですから、本則課税に移ったほうが事業者のためになる場面は多いはずです。それは事実だと思います。

ただ、政策全体として眺めると、免税・簡易課税から本則課税への移行を後押しする形になっています。インボイス制度が始まったときの案内を思い出しました。登録さえしていただければ大丈夫という説明の裏に、事務負担と届出の縛りがあるのとどこか構造が似ています。還付が受けられます、の一言で判断していい話ではないだろうと感じます。

戻るときのことまで含めて考える

減税は2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間とされ、期限後は8%に戻す前提が置かれています。

一方、消費税の届出には継続適用の期間が定められています。免税事業者が課税事業者を選ぶ届出も、簡易課税をやめる届出も、一般に一度出すと2年間は元に戻せません。

税率が8%に戻った後も本則課税のまま、という状態は十分に起こり得ます。そのときには、事務負担だけが残ります。

もう一点、期限の問題があります。届出は原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに出す必要があります。個人事業者が2027年分から本則課税でいくなら、2026年12月31日が期限ということになります。今年の年末です。減税が始まるのは2027年4月ですから、感覚よりかなり早いです。

もっとも、今回の改正では届出時期について何らかの経過措置が置かれる可能性があります。法案自体がまだですので、この点は確定情報を待つ必要があります。

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