日本経済新聞の報道によれば、個人や企業が外貨預金を急速に増やしており、2026年4〜6月期の平均残高は前年同期から約4兆円増えて過去最大の伸びを記録しました。国内の銀行に預けられた外貨預金の残高は同期におよそ26兆1000億円で、前年同期より18%増えています。円安が続くなかで、円だけを持っていることへの不安が広がっているのだと思われます。
外貨を持つべきかどうかという話はここでは扱いません。手数料の水準も金融機関によって差が大きいので触れません。整理したいのは税金です。同じように米ドルを持っていても、外貨預金で持つのと外貨建MMFで持つのとでは、税金の計算方法がまったく違います。
外貨預金は利息と為替差益で扱いが分かれる
外貨預金から生じる利益は二種類あります。利息と、円安が進んだことによる為替差益です。
利息は利子所得です。国内の銀行に預けた外貨預金であれば20.315%が源泉徴収されて課税関係は終わり、申告は要りません。
厄介なのは為替差益のほうです。こちらは一般に雑所得となり、総合課税の対象になります。給与や事業の所得と合算したうえで税率が決まるため、所得の多い人ほど負担が重くなります。所得税と住民税を合わせると、最大でおおむね55%程度です。
しかも雑所得の損失は、他の所得と通算できません。翌年以降に繰り越すこともできません。円高に振れて損が出ても、税金の面では基本的に手当てがないということです。
外貨建MMFは申告分離課税
外貨建MMFは公社債投資信託です。2016年以後、売却益や償還益は上場株式等に係る譲渡所得等として扱われ、20.315%の申告分離課税となります。為替の変動による損益も、この売却損益に含まれる形で計算されます。分配金も申告分離課税を選べます。
税率が所得の大きさに左右されません。上場株式や投資信託の譲渡損益・配当と損益通算できます。損失が出た年に確定申告をしておけば、3年間繰り越せます。特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば、損益の計算は証券会社がしてくれます。
同じ「ドルを持っていて円安になった」という結果でも、外貨預金なら総合課税で最大55%程度、外貨建MMFなら20.315%。この差は小さくありません。
乗り換えた時点で、一度精算される
では今ある外貨預金を外貨建MMFに移せばよいかというと、その手前に一段階あります。
国税庁の質疑応答事例に、外貨建の預金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の取扱いが示されています。
この場合、投資した時点の円換算額と、その投資に充てた外貨を取得したときのレートによる円換算額との差額を、為替差損益として所得に計上する必要があるとされています。ドルをドルのまま動かしただけに見えても、そこで含み益が実現したものとして扱われるわけです。
一方で、同じ外国通貨のまま預金として預け入れ直すだけであれば、外貨建取引には当たらず、為替差損益は認識しません。外貨定期預金の自動更新などがこれにあたります。外貨を外貨のまま持ち続けている限りは課税されず、別の資産に変えた時点で精算される、という考え方です。
参考:預け入れていた外貨建預貯金を払い出して外貨建MMFに投資した場合の為替差損益の取扱い
したがって、円安局面で大きな含み益を抱えた外貨預金を持つ人が乗り換える場合、その年に雑所得が立ちます。乗り換えるかどうかは、この負担も含めて判断することになります。
計算してくれる人がいない
外貨預金の為替差益でもうひとつ面倒なのは、誰も計算してくれないという点です。証券会社の年間取引報告書にあたる書類は届きません。いつ、いくらのレートでドルを買い、いつ、いくらで円に戻したのか。自分で記録して計算するほかありません。何度も出し入れしていると、取得価額を押さえるだけで相当な手間になります。
説明していて一番伝わりにくいと感じるのが、この部分です。銀行に預けているのだから銀行側で処理されているはずだ、という感覚は自然なものですが、実際にはそうなっていません。
なお、給与所得者で他に確定申告の必要がなく、給与以外の所得が年間20万円以下であれば、所得税の申告は不要です。ただし住民税にはこの取扱いがないため、市区町村への申告は別に必要とはなりますが、このような場合に住民税だけを申告している方は私の観測の限りにおいてはお見かけしたことはありません(行間を読んでいただければ)。

