税理士業に係る消費税は原則課税か簡易課税か

消費税

開業してから1年弱が経ちました。まだ1年目の感触ですので、これを一般化するつもりはありません。私自身があまり経費をかけていない、という事情もあると思います。

そのうえで書きますと、税理士業は売上に対して必要経費があまりかからない仕事だという印象を持っています。自宅の一室が事務所ですし、大きな設備も在庫もありません。会計ソフトの利用料、税理士会の会費、通信費くらいです。売上のほとんどは、自分自身が動いた時間から生まれています。

自分の数字を並べてみると、想像していたよりも外部への支出が少なく、その点は少し意外でした。

経費が少ないと、原則課税は不利になりやすい

消費税の計算方法には、大きく分けて原則課税と簡易課税があります。原則課税は、売上で預かった消費税から、仕入や経費で支払った消費税を差し引いて納める方法です。簡易課税は、業種ごとに決められた割合を使い、支払った消費税を実際に集計せずに計算する方法です。

税理士業はサービス業として第5種事業にあたり、この割合は50%です。簡易課税を選ぶと、預かった消費税のおおむね半分を納めることになります。

そうすると、比較の基準ははっきりします。売上に対する課税仕入れが50%より少なければ、一般には簡易課税のほうが納める消費税は少なくなります。経費があまりかからない私のような1人でやっている税理士は、この条件に当てはまりやすいと考えています。

令和8年分は2割特例、令和9年分と令和10年分は3割特例

もっとも、当面はもう一つ選択肢があります。

インボイス登録をしたために課税事業者になった人は、納める消費税を預かった消費税の2割にできる特例があります。基準期間、つまり2年前の課税売上高が1,000万円以下であることなどが条件です。私もインボイス登録をしていますので、現時点では、令和8年分について原則課税ではなく2割特例を使うつもりでいます。

この2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業者であれば令和8年分が最後です。

その後については、令和8年度税制改正で新しい措置が設けられました。納める消費税を預かった消費税の3割にできる特例です。対象期間は令和9年分と令和10年分の2年間で、対象は個人事業者に限られます。法人は対象外です。

2割にしても3割にしても、第5種事業の50%より低い水準です。条件を満たす個人のひとり士業であれば、令和10年分までは特例を使う場面が多いと思います。

特例が使えなくなったあとは、簡易課税との比較になる

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば、これらの特例は使えません。特例期間が終わったあとも同じです。その場合は、原則課税と簡易課税の比較に戻ります。

ここでも、経費が少ない個人の税理士であれば、第5種の簡易課税のほうが納める消費税は少なくなることが多いと考えています。

ただし簡易課税を選べるのは基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合で、いったん届け出ると原則として2年間は変えられません。事務所を借りる、車を買うといった大きな支出を予定している年は、原則課税のほうが有利になることもあります。

人件費の比率が高い業種にも、同じ話がある

この構図は税理士業に限りません。他の士業も、売上の多くが自分や従業員の働きから生まれます。そして給与は消費税の課税仕入れになりません。売上に対して外部への課税仕入れが少ないほど、原則課税で差し引ける金額は小さくなります。

つまり、人件費の比率が高い業種ほど、簡易課税や各種特例が有利に働きやすいということです。材料や商品の仕入れが大きい飲食業や小売業とは、判断の向きが変わります。

自分の事業がどちら側にあるのかを一度確かめておくと、選択の見当はつけやすくなります。

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