税務調査や行政指導の際に、担当職員から請求書や帳簿データの提出を求められることがあります。これらの書類を、令和6年からe-Taxで送信できる制度が用意されています。便利な制度ですが、実務で使ってみると、いくつか引っかかる点があります。
制度の概要
国税庁が公表している「調査関係書類のe-Taxによる提出」は、税務調査・滞納整理・行政指導の際に、担当職員から求められた書類をe-Taxで送る仕組みです。PDF形式またはCSV形式で提出でき、e-Taxを利用している法人・個人であれば使えます。税理士による代理送信も可能です。
https://www.e-tax.nta.go.jp/topics/2024/20240308/chosakankei.pdf
提出できる書類は、請求書や納品書の写し、帳簿データなど、あくまで担当職員から個別に求められたものに限られます。確定申告や届出など、ほかの手続には使えません。
令和6年4月からは、税務調査だけでなく、行政指導の際に求められた書類も対象に含まれるようになりました。書面でやり取りしていたものを電子で送れるようになるのは、納税者・税理士の双方にとってありがたい話です。
「提出先調査部門等番号」というハードル
ところが、この制度を使うには「提出先調査部門等番号」という番号の入力が必要になります。これがどこにあるかというと、国税庁の案内文書には「担当職員から個別にお伝えいたします」としか書かれていません。
つまり、提出のたびに担当職員へ電話で確認しなければなりません。番号自体は部門ごとに固定されているはずのもので、頻繁に変わる性質のものではないと思われます。それであれば、税務署ごとの一覧をサイトに掲載しておいてくれてもよいのではないか、と感じています。
入力を間違えると、担当職員のもとにデータが届かず、再送信が必要になります。番号の取り違えで二度手間になるリスクを、利用者側だけが負っている状態です。
職員側の認知度の問題
もう一つの問題は、肝心の職員側でこの制度の存在自体を知らない方が一定数いることです。実際に「提出先調査部門等番号を教えてください」と問い合わせても、話が通じないことがあります。
中には「面倒だから郵送で送ってほしい」と返してくる方もいるようです。納税者・税理士に対して電子化を推奨しておきながら、現場の運用がそれに追いついていないのは残念に思います。せっかくe-Taxで完結させようとしているのに、結局紙で送り直すことになった場面があると、何のための制度なのかと考え込んでしまいます。
制度設計と現場運用のずれ
電子化を進める方向性そのものには、特に異論はありません。むしろ、従来は分厚い資料をコピーして持参・郵送していた手間を考えれば、e-Taxで送れる選択肢が増えたのは前進です。
ただ、制度を使いやすくするには、入口でつまずかせない工夫が必要です。番号の取得方法が「電話で聞いてください」では、利用のたびに摩擦が生じます。職員側への周知も、利用者からの問い合わせを受けた段階で「知らない」と返されないだけの体制を、整えておいてほしいところです。
令和6年4月の対象拡大によって、この制度を使う場面はこれから増えていくはずです。だからこそ、運用面の整備が追いついてくれることを期待しています。


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