令和8年7月28日の午後4時27分頃、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生しました。気象庁の暫定値でマグニチュードは7.1、熊本県宇城市と氷川町で震度7が観測されています。被害の全容はまだ分かっていません。
本来、有事の際に税務申告などは真っ先に考えることではありませんが、当面は税のことを後回しにしてよいということをお伝えしたく、本記事において申告期限の延長について整理しておきます。
個人と法人では前提がそもそも違う
所得税法には、確定申告書の提出期限そのものを延ばす規定は置かれていません。個人の申告期限は、原則として動かないものとして組まれています。
一方、法人税法には申告期限を延ばす規定があります。ひとつは法人税法第75条です。災害その他やむを得ない理由で決算が確定しない場合に、法人の申請に基づいて税務署長が期日を指定するというものです。もうひとつは第75条の2で、こちらが定款等の定めによる特例にあたります。会計監査人を置いていて、事業年度終了後3か月以内に定時総会が招集されない常況にある場合などが対象です。
ただし、これらはいずれも決算が固まらないことへの手当てです。災害そのものに正面から対応する規定ではありません。
各税法とは別に国税通則法第11条がある
そこで出てくるのが国税通則法第11条です。災害その他やむを得ない理由により、申告や納付などを期限までにできないと認められるときは、政令の定めるところにより、その理由のやんだ日から2か月以内に限って期限を延長できる、という規定です。個人か法人かを問いません。税目も問いません。
政令にあたるのが国税通則法施行令第3条です。1項が地域指定、2項が対象者指定、3項が個別指定という構成になっています。
地域指定は、国税庁長官が地域と期日を指定するものです。指定された地域内に納税地がある人は、延長の申請手続をしなくても期限が延長されます。対象者指定は、所得税の確定申告期におけるe-Tax(電子申告)の通信障害など、特定の税目の申告等ができない人が多数に上る場合を想定したものです。個別指定は、税務署長に申請して個別に延長を受ける形になります。
地域指定はあくまで納税地が基準です。指定地域内に事業所があっても、納税地が地域の外にある場合は延長されません。その場合は個別指定で対応することになります。
指定は国税庁長官告示という形で示される
では、国税庁長官の指定はどのように行われるのか。国税庁長官告示という形で示され、官報に掲載されます。国税庁のホームページにも掲載されます。
平成28年の熊本地震のときの告示が参考になります。
熊本県の一部の地域における国税に関する申告期限等を指定する件(平成28年10月国税庁告示第15号)
内容を見ると、平成28年4月の告示ではいったん期限を延長し、期日は「別途国税庁告示で定める」とされていました。その後、10月17日付のこの告示で、平成28年11月30日という期日が指定されています。対象となる市町村も具体的に列挙されています。
まず期限を止めておいて、状況が落ち着いてから期日を決める。この二段構えになっているのが実際の運用です。
ただし、告示が必ず出るわけではない
今年の4月20日、16時53分頃にも三陸沖でマグニチュード7.7の地震があり、津波警報が出されました。そのときは事前の備えという切り口で記事を書いています。

参考までに申し添えると、この三陸沖の地震については、申告期限等に関する国税庁長官告示は発遣されていません。地域指定は、都道府県の全部または一部にわたって申告や納付ができない状態が広範囲に生じたと認められる場合の措置です。強い揺れや警報があっても、その後の被害の広がり方によっては、地域指定に至らないことがあるということになります。
今回はどうなるか
昨日の地震については、この記事を書いている時点で、まだ何も公表されていません。震度7を観測した内陸の地震であることを踏まえると、平成28年と同じような流れになるものと思われます。
報道を見ながら申告期限のことを考え始めた自分はどうなのかとも思いました。しかしながら、こういう取扱いが法律と政令にあらかじめ用意されていて、多くの場合はその流れで処理されるので、当面は税のことを後回しにしてよい。そう言える根拠として、国税通則法第11条と同法施行令第3条の存在は頭の片隅においてもよいのかなと思っています。
