会社を解散すると、清算の手続きに入ります。資産を換価し、債務を弁済し、残ったものを株主に分配する。大まかな流れはこのような感じです。
見落とされやすいのは、その入口に置かれた手続きです。
解散したら官報に載せる
会社法は、清算に入った会社に対して、債権者に債権を申し出るよう官報で公告することを求めています(会社法499条)。申出の期間は二か月を下ることができません。あわせて、会社が把握している債権者には、個別に通知します。
公告を出さないまま清算を進めた場合、過料の対象になり得ます。金額は事案によりますが、法律上は百万円以下と定められています。
掲載には行数に応じた料金がかかります。解散公告は定型的な文面ですので分量は限られますが、それでも数万円の実費が生じます。会社をたたむだけの手続きに、それなりの現金が要るということです。
登記は公告なしでも通ってしまう
清算結了の登記を申請する際、添付するのは主に決算報告です。官報公告を出したことを示す書類は、通常求められません。登記官が公告の有無を審査する仕組みにはなっていないのです。
したがって、公告を出していない会社でも、登記自体は問題なく完了します。登記簿は閉鎖され、税務署への異動届も受け付けられ、外形上は何事もなく終わります。
手続きが通ってしまうために、省略しても構わないものだと受け取られやすい。しかし法律上の義務であることは変わりません。通るかどうかと、やらなくてよいかどうかは別の話です。
公告は会社を守る側面もある
債権者保護のための手続きだと説明されることが多く、それはそのとおりです。ただ、清算する側にとっての意味もあります。
公告で定めた期間内に申し出なかった債権者は、清算から除斥されます。除斥された債権者は、まだ分配されていない残余財産に対してしか請求できません。株主への分配を終えた後では、請求先が事実上残らないことになります。
ただし、会社が把握している債権者はこの対象から外れます。知っていながら個別の通知を怠った相手に対しては、この効果は働きません。ここを取り違えると、公告を出した意味がなくなります。
公告を出さずに清算を終えた会社に、後から債権者が現れたとします。会社は既に存在しません。そのとき責任を問われる相手は清算人です。任務を怠ったと判断されれば、損害の賠償を求められる余地があります。
二か月は税務の日程も動かす
公告期間の二か月は、税務の日程にもそのまま影響します。
残余財産確定日は、会社が任意に決められる日付ではありません。債務の弁済がすべて終わった事実が生じた日を指します。そして一般に、公告期間中は債務の弁済が制限されます。少額の債権などについて裁判所の許可を得る道はありますが、原則としては期間の満了を待つことになります。
つまり、解散日から二か月は残余財産が確定しません。ここを短く見積もると、その後の申告や分配の予定が組めなくなります。
住民税の均等割も月数で計算されますので、確定日が一日ずれるだけで負担が変わることがあります。公告期間を挟んで日程がずれ込むと、その分の負担が乗ってきます。
面倒なのは金額ではなく順番
私が清算の案件で一番気を張るのは、この入口の部分です。
やること自体は難しくありません。文面はほぼ定型で、申込みも窓口を通せば済みます。ただ、解散の登記が終わってひと段落した直後に来るため、後回しにされやすい。そして後回しにすると、二か月の起算点がそのまま後ろにずれます。
金額の大きい論点ではありません。それでも、順番を間違えると取り返しがつきにくい種類の手続きだと感じています。
会社をたたむと決めた段階で、解散登記と官報公告はひとまとまりのものとして日程に入れておく。それだけで、その後の進行はかなり見通しがよくなる気がします。
